4月6日(土)

〈陽菜乃視点〉










目を開けて何となく顔の肌の感じや

服に違和感を感じながら体を起こし

昨日シャワーも浴びずにそのまま寝た事を思い出し

「最悪」と呟いて3軒目のスナックでついた

タバコの臭いとヤニを落としたく直ぐに

シャワールームへと向かった





体を洗いながらビールの事を思い出し

またタメ息を吐いてお湯で流していき

昨日の夕方以降全くウサギと連絡をとってないなと思い

浴室から出て体を拭きながらさっきまで着ていた

ジャージに目を止めた






「お礼しなきゃだよね…」






人に見られたくないから缶コーヒーでも

一緒に紙袋に入れて渡せばいいかと思い

バックからスマホを取り出すと

すごい数の着信が入っており

てっきりウサギかと思い見てみると

知らない番号から15件以上夜中に着信が入っていて

タクシーの中での事を思い出した…






「何??会社の人??」






他の通知を確認するとウサギから

何通かメッセージと電話は入っているが

それ以外は何もなく…





ウサギに寝ていたとだけ返事を返して

15件の不在着信の相手に発信した…






ソウジ「もしもし…」






「あの…えっと…」







声を聞いても誰か分からず

なんて言っていいのか悩んでいると…







ソウジ「お疲れ様です…佐藤 蒼司です」






「えっ…蒼司…くん?」






ソウジ「何度も電話したんですけど…」






「あー…疲れてて…

  あっ!ジャージありがとう本当に助かりました」






ソウジ「・・・・そのジャージのポケット見てもらえます?」






「え??」と言いながら立ち上がって

脱衣室にあるジャージのポケットを触ってみると

チャリッと指先に何か当たり

何となくソレが何で…

何で彼が15件も電話をしてきていたのかが分かった…







「あっ…鍵…」






ソウジ「僕一晩中ファミレスにいるんですけど?」



 



蒼司君の声は会社での素っ気ない単調な話し方

とは違い明らかに怒ってますよと言う位に

トゲトゲとしていた…





 

ソウジ「鍵取りに伺いますから、家どの当たりです?」






「いや、迷惑かけたから持っていくよ」






ソウジ「先輩今起きたんですよね?」






「えっ…うん…」






ソウジ「僕は一刻も早く家に帰ってシャワーを浴びて寝たいんですよ!

    先輩のメイクしたり着替えたりだのの

  時間を待ってる気はないんです、早く住所言ってください!」







7歳下の新入社員にこんな事を言われる

29歳っていったい何人いるんだろうと思いながら

「すっ…すみません…」と謝っていた…





半分放心状態で住所を伝えると

「はぁー」と電話の向こうで聞こえるため息に

また怒られるんじゃと思っていると…







ソウジ「先輩、僕と住所近いの知ってました?」






逃げるようにタクシーに乗った事を思い出し

「いや、知らない…」と嘘をつくと






ソウジ「最初から同じタクシーに乗ってたら

  こんな事になってないんですよ!!」






嘘だと分かったのかまた怒り出す

蒼司君に「すみません」と謝りながら

ジャージ借りなきゃよかったと後悔をしていた…







ソウジ「タクシーで10分位で行きますから!」







そう言うとブチっと電話は切れて

固まったまま、通話終了になった画面を見た…







「わたし…年上の先輩よ… 」




 



コンビニの彼よりも生意気で怖いと感じ

手にある鍵についてある紫色をした

ロボットのキーホルダーを見て「何よ!」と

鍵を投げると思ったよりも強く壁に当たり

キーホルダーの頭がとれてしまい更に固まった…


 





ソウジ「・・・・・・」


 




「ごっ…ごめんなさい…なんか…壊れてて?」






投げて壊しましたなんて言えず

鍵と壊れたキーホルダーを差し出して謝ると

蒼司君の顔は真顔のままで一言も話さなかった…






「あの…ずっとファミレスに?」





ソウジ「先輩、ジャージ返してください」






私の質問には何も答えず

そう言うと「早く」と手を差し出している…






「でもビールの臭いもついてるし洗って返すよ?」





ソウジ「いえ、もう今日持って帰ります」






蒼司君の圧はやっぱりコンビニの彼よりも怖く

「はい…」と返事をして

直ぐに部屋からジャージを取ってきた…






「本当にごめんね…」





ソウジ「お疲れ様でした」






ソウジ君はそう言うと直ぐに背を向けて歩いていき

タクシーを降りたって事は

ホントに近所なんだと思い見送った…






部屋に入り悪い事したなと思い

コーヒーを煎れながらあのキーホルダーは

どこで買えるかなと考えていると

ベッドの上で着信を知らせる鈍い音が聞こえてきて

また蒼司君かと思い恐る恐る手に取ると…







ハルト「やっと出たよ!」






ウサギの声にホッとしてコーヒーを置いたままの

キッチンへと歩いていき「ヒナ!」と

怒るウサギの声を聞いても

さっきの蒼司君に比べたら全く怖くなく

むしろ安心していく






「・・・・はーちゃん…もっと話して?」






ウサギの声が聞きたくそう言うと

ウサギは何も話さなくなり…

「はーちゃん?」と呼ぶと…







ハルト「会えない時に甘えてくるんだから…」






「ふふ…初日はどうだった?笑」






ハルト「もう大変だった…

  洸達がワザと大変なヤツばっかり頼むから」






「鍛えてもらって良かったじゃない?笑」







やっぱりうちのウサギは可愛いなと

思いながらウサギと話していた…











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