〈ハルト視点〉









ハルト「・・・・真っ暗…いないのかな?」






研修の後にヒナのアパートに来てみると

まだ22時過ぎなのに部屋の電気が消えていて

何処かに出掛けているのかなと思いながらも

呼び鈴を押してみた






ハルト「・・・・やっぱり出掛けてるのかな…」






スマホを取り出して発信しても繋がる事はなく

タメ息を吐きながらドアに寄りかかり

帰ってくるのを待とうかと考えていると

背中が呼び鈴のボタンに当たりピンポンと

音が響いたから慌ててドアから離れると

部屋の中から音が聞こえてきた…





( ・・・・えっ…いるの? )





ガチャッと鍵の開く音の後にドアが開けられ

寝起き顔のヒナが目をこすりながら出てきた…






「・・・・はーちゃん…どうしたの??」






ハルト「・・・・寝て…たの… 」







ヒナは怒ってる風も泣いていた感じもなく

本当に寝て起きたばかりだった…

俺は「入るよ」と少し不貞腐れながら

部屋の中に入っていくとテーブルにある

竹輪とカニカマの袋を見つけてヒナを見た







ハルト「夕飯食べてないの?」






「ん??あんまりお腹空いてなくて

  それよりもどうしたの?研修じゃなかった?」






ハルト「誰かさんが朝から連絡取れないから…

  心配して来たんだよ…何でLINE見てくれないの…」







ヒナを見ると元気そうだしスマホも

ベッドの上にあるから

ワザとひらいて見てないんだと思った…






「LINE…あっ!!」






ヒナはベッドにあるスマホを手に取って

「はい」と差し出してきたから

戸惑って受け取ると…







ハルト「ヒビ…えっ??壊れてるの?」






「起きたら床に落ちててそうなってたのよ…

  地面に落ちても平気なのに変よね…」






ハルト「今までがラッキーなだけだよ!

  てか、保護フィルムとかしてないの!?」





「あんなシールで守れるの?」






ハルト「ないよりかはマシだよ!!

  もー!心配して来たのに…

  起きて気づいたなら直ぐに修理に行ってよ!」







俺は昼過ぎからずっと

ヒナと連絡取れなくて焦ってたのに

ヒナは全然平気そうにしているのを見たら

段々とイライラしてきた…

 





「・・・・ごっ…ごめん…」






ハルト「ヒナは…ヒナはいつもそうだよッ!」







俺は慣れない教習所とバイトの研修で

疲れていたのもあって

もう二度と怒鳴らないって約束したのに…

頭で分かっていても口は止まらなかった






ハルト「俺ばっかり好きで

  ヒナは全然俺を優先してくれないじゃん!」







( こんな子供っぽい事が言いたいわけじゃないのに… )



 




ハルト「仕事や自分の事ばっかりじゃなくて

   ちゃんと俺の事も考えてよ!」






「・・・・・・」






ヒナの顔を見た瞬間息が止まった…

ヒナは前の様に怯えた表情じゃなく

真っ直ぐな目でただジッと俺を見ていたから…





俺は直ぐに荷物を持って

逃げるように部屋から出て行った…






ハルト「・・・・怒って…た…??いや…あれは…」






ヒナの目は少し呆れたような…

冷めたで俺を見ていた…





俺は歩く足を止めて立ち止まり

このまま帰ったらダメな気がした…

ヒナはあの性格だし

バックアップなんてとっているはずがないから

スマホを修理しても俺の番号も分からない

ままなんじゃないかと思った…






ハルト「・・・・ヒナも…疲れてるの知ってたのに…」







帰ってご飯もお風呂も洗濯物も…

全部が用意してもらってる俺と違って

ヒナは毎日遅くまで残業して

それを全部自分でしているんだ…

休みの日も仕事があるのに…

俺を泊めてくれたり…







ハルト「クッキーも…」







俺は踵を返してヒナのアパートへと戻っていった…








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