第8話 私

照れながらも出ていく彼のことを見送って、時間が経つにつれて私の大胆な行動だったとちょっとだけ照れてしまう。


あれはやりすぎちゃったかなぁ、あまりやりすぎると引かれちゃうし、やめておこうかな。


「よし、やるか!」


ちょっと緩んでいた自分の気を引き締めるために軽くて両頬を叩いた。


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洗濯、お風呂の掃除、食器洗い等一通り全てやってソファに座って久しぶりに暇な午後を過ごしていた。


昨日まではいつ体目当ての男が帰ってくるか怯えていた。悪い日はこの時間まで行為をされていたのを考えると、吐き気が襲ってきた。


今ここでソファに座り暇な時間がある事がとても幸せだ。


早く玖呂戸さん帰ってこないかなぁ…


この家にいる限り、今まで渡りあるって来た家の男には遭遇しないとわかっていてもこの沈黙の時間が私には酷く怖かった。


チッチッチッチ、時計の針がリズムを刻みながら時を刻んでいく音に耳を傾けている間にいつの間にかソファに座ったまま寝てしまった。

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「お前の身体は本当に綺麗だよ。若いし綺麗なJKをこれから毎晩抱いていけると思うとほんと嬉しいな、金も払うしお前にとっても悪い条件じゃないだろ?」


「ずっと居ても良いなんて助かります!その上お金まで貰っちゃってむしろ悪いというか、なんというか…」


本当はそんなこと思って無いし、機嫌を取らないと殴られので男の好みそうな態度を取った。


嫌なら次の場所に行けばいいと思ったが、この男は束縛がすごく油断が無い。逃げられる希望が無い…


「喉が乾いたな、取ってくるお前も欲しいか?」


「あ、私は大丈夫です、」


「おーけ、んじゃ俺の分だけ取ってくるよ」


笑顔で男はそう言っていたが、あの男の顔は何を考えているか分からな表情だった。


「……どこからか抜け出さないと」


一戸建てで、勝手口のようなものがあるのではないかと思って、探してみたが何処にもそのような類のものは無かった。


「おい、何してんだ」


後ろから低い声で私を刺す声が胸を貫いた。


「いえ、あのその…と、トイレはどこかなって、ちょっと言いずらくて1人で探そうかと…」


「トイレなら出てすぐのとこにあるだろうが!てめぇまさか逃げるつもりだったのか?行くあてもねぇってのによォ!」


その瞬間振りかざした拳は私へとまっすぐ向かっていた。


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ん!


不意に身構えるように起きた。


まさか夢でちょっと前に起きた事を見るなんて最悪の気分だ。


「まぁ、全部私のせいなんだけどね」


時計を見るとそんなに時間は経っていないもののとても長く苦しい夢だった。


「もう少し、時間あるし窓とか拭いてまとうかな」


今はとにかく何かしていないとまたあの日々を思い出す時間には十分すぎたから。


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