第7話 公爵家
シェリーは手慣れた感じで、私を着替えさせ、ヘアセットまでしてくれた。
「ハナ様の髪色は、漆黒で光りに当たると天使の輪が出来てとてもお美しいですね」
「私の国では黒髪が多くて、そんな風に言われた事ないので、恥ずかしいです」
私は褒められなれてないので、恥ずかしくて顔が赤くなる。
「フフ。ハナ様は純粋なのですね。ウォルト様が気に入ったのがわかります」
「ウォルって私の事気に入ってるの?」
シェリーはニコニコして
「私はそう思いましたが、ウォルト様に尋ねてみては、どうでしょうか?」
「えー逆に返事が怖い!気に入ってもらってもいなくても、ここに置いてくれただけで私はありがたいので」
「さあ!できましたよ」
私を鏡の前に立たせる。 ショルダータイプの深緑のドレスで、Aラインがとっても素敵なデザイン。ところどころに刺繍とラメが入っていて、結婚式のカクテルドレスみたい。
「素敵・・・・この世界の人はみんなこんな素敵なドレスを着るのですか?」
シェリーは優しく笑って
「みんなではありませんが、この世界の貴族の方はお召になりますよ」
「へ?私貴族じゃないですけど、いいんですか?」
「ハナ様は何から何まで謙虚でいらっしゃいますね。私が知っておりますこの世界を明日からお教えいたしますね」
「はい。シェリー、ありがとうございます」
私はウォルの待つ食事をするダイニングルームへ向かった。 シェリーがダイニングルームの扉を開けると そこには大きなシャンデリアがあってとっても長いテーブル。そのテーブルには真っ白なクロス
「うわぁ!本の中の世界みたい」
どこに行っても、どこを見ても、私には全てが素敵で全てが輝いている。
ウォルに気づいて興奮気味に私は
「ウォル!凄いね!何もかもが綺麗なの」
私が目を輝かせてウォルに話しかけた。
ウォルはそっと私に手を差し出して
「ハナの方が何よりも私には、綺麗に見えるよ」
「え?」
ウォルの自然な殺し文句にもん絶しそうになる。
私は顔を真っ赤にして
「ウォル!そういうの私の世界では簡単に言ったりしないから、やめて欲しい」
赤くなった顔を見られないように手で顔を隠して、下を向いた。
「この世界でも、簡単に言わないけど?」
「もう!そういうのもやめて。免疫ないから恥ずかしいの」
ウォルはこの上なくご機嫌でニコニコしている。
私達は席に着いた・・・・・・・
え?
「ウォル、私達2人だけで食べるの?ご両親は?」
「両親はタウンハウスにいるけど、近いうちにこっちに帰って来るから、その時に紹介するね」
使用人の人達は私達の食事の準備をしてくれている。 そうか、ウォルは偉い人だから一緒に食べないんだ。
「ウォル?私はここで一緒に食べていいのかな?私ってば働かないと、ダメじゃない?」
「そんな心配しなくて大丈夫だよ。ハナは私の客だからね」
「でも本当はポイってされてたんだよ?今頃私は食べるものもなくて宿無しだったはずだよ?今頃生きてるかも謎だよ。なのにこんな贅沢しちゃったら、後で辛くなりそう」
私は素直に現状に喜べなくて、
「せっかくのウォルのおもてなしなのに、変な事言ってごめんね」
私はシュンとなった。 ウォルは何でもないという顔をして
「ハナはゆっくりこの世界に慣れたらいいよ。勇者様もどうせすぐには旅立てないのだから」
「すぐに行けないの?」
私はすぐにでも帰れるのかと思った。 青ざめた顔をした私にウォルが
「見て、ハナ」
そういうと、 ウォルの手から空中に水を魔法で浮かせてどんどん魚の形に変えて行く!!! 魚が本当に泳いでいるみたいで 水族館のようだった。 私の目はまた驚きで輝いた。
「ハナ。知らない事は怖いけど、一つずつ理解すれば、きっと道が開ける。一緒に乗り越えよう」
「ウォル。ありがとう」
食事が終わって、私は部屋に帰った。湯浴みもシェリーが手伝ってくれて、何だか恥ずかしかったけど。何とかベッドまでたどり着いた。
「雷斗・・・・・きっと心配してるよね?でもアリス王女様が絶対会ったらダメって・・・私が雷斗の足手まといになったら、2人とも元の世界に帰れなくなる。例えアロニーの村に行って雷斗が魔王を倒すのを待ったとしても、今の私では、きっと帰りの道が開けたときに間に合わない気がする。雷斗だけでも帰ってもらえたらいいけど、雷斗なら自分だけ帰るわけがない。それなら必ず2人で帰らないと。戦えなくても、雷斗の側にいなくちゃだめだ」
明日から魔法を教えてもらおう。 戦えるかわからないけど、きっとなんとかなる。
雷斗も頑張って。
神様!雷斗がケガをしませんように。
無事2人で元の世界に帰れますように。
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