第12話 初陣への招待状(3)
恵はあきらめた顔でL字になっている建物をグルッと歩き出し、”登山部”とネームの掲げられた一室のドアを開けた。
「あのー・・・・・・」
恵がひょこっと顔をのぞかせると中の人が顔を向けた。
「おや、恵、なあんだぁ。今日も負けたのか。しょうがないな。ほら、早く入りなさい」
そう言いながら手招きして恵をむかい入れたのは、
恵は素早くショートパンツをはくとさらにその上にジャージをはいた。
「へー、それで自転車にのるの?」
恵の着替えを見て恭子は声をかけた。
「いえ、これはウォームアップ用です。乗るときはショートパンツでほら」
恵はそう言って少しジャージを下げて見せた。
「でも、男子はちゃんとレーシングパンツってやつをはいてるのにね」
「ああ、あの二人は経験者だから道具は全部そろってるんです。私は始めたばかりだからスーツもまだできてないんです。今度、届いて来るんですよ」
恭子は納得したように軽くうなずいた。
「相沢君、だっけ、あのかっこいい方」
「えっ、美樹雄のことですか?」
「そうそう♡で、元気のいい方が」
「バカ瞬です」
恵は顔をしかめて見せた。それを見て恭子はクスリと笑って恵のカバンをロッカーに入れた。
「まあ、いろいろあるわね。でもイヤになったらいつでも登山部にどうぞ。歓迎するから」
「先輩こそ、自転車部にどうぞ。部長の座はいつでもあけますから」
恵は笑いながら部室を出ていった。
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