第199話 SSレントとの出会い:シャノンの場合


「とまあ、私はこんなところ。そっちはどうなのよ?」

「じゃあ、今度は私の番なの」


 シャノンはレントへの想いを語り始めた――。


   ◇◆◇◆◇◆◇


 私は最初、水魔法使しか使えなかったの。

 それも、得意なのは氷魔法だけだったの。

 それで、周りからは『氷のロリ』って呼ばれてて、それが嫌だったの。


 だから、他の属性を使える様に魔法の勉強を一生懸命したけど、行き詰まっていたの。

 レンレンと出会ったのは、そんな頃なの。


 その頃はもう『断空の剣』は有名になってたの。

 レンレンのギフト【魔蔵庫】もそうだったの。

 自分の魔力を他人に貸す――そんなこと信じられなかったの。


 だから、思い切って尋ねてみたの。

 そうしたら、レンレンは答えてくれた。


「うーん。言葉にはしづらいんですけど、自分の魔力の形を変えて、相手に渡す感じなんですよね」


 レンレンにとっては何気ないことだったと思うの。

 ナミリアのときと同じで、当たり前のことを言っただけなの。

 でも、その言葉が、レンレンの【魔力貸与】が、私の壁を破ってくれたの。


 どんなギフトやスキルでもそうだけど、別にそれがなくても、全然使えないわけじゃないの。

 たとえば、剣士じゃなくても、剣は振れるの。

 もちろん、本職にはとうてい及ばないの。


 魔法も同じなの。火魔法スキルがなくても、小さな火くらいは起こせるの。

 でも、スキルがないと、それが限界なの。

 とても、実戦では使えないの。


 でも、レンレンの【魔力貸与】――魔力を変えられることを知って、壁が壊れたの。

 レンレンのスキルは自分の魔力を他人に魔力として与えられるの。

 そう考えれば、自分の魔力をあるものから他のものに変換することは可能――少なくとも、その可能性はあるの。

 その仕組みが理解できれば、スキルがなくても、どんな魔法でも使えるんじゃないか――そう思ったの。


 そもそも、魔法ってなんだろうって根本から考えると、自分の魔力を詠唱によって変換し、なんらかの形で実現させるものなの。

 その変換を助けるのがスキルなの。


 計算の仕組みが分からなくても、計算機を使えば答えは出せるの。

 スキルもそれと同じ。

 だとしたら、変換する仕組みさえ理解すれば、どんな魔法でも使えるはずなの。


 まずは、自分の氷魔法の変換の仕組みを解析したの。

 そして、それを火魔法に応用してアレンジしたの。

 そうしたら、火魔法がつかえるようになったの。


 今の私があるのは、すべてレンレンのおかげなの。

 私もナミリアと一緒。

 レンレンに恋したの。


 でも、私はこんな身体だから、自信がなかったの。

 私のことなんか、女の子として見てもらえない――そう思ったの。


 だから、いかにも女性なナミリアに嫉妬したの。

 本当はナミリアは悪くないの。


 悪いのは、そんなことを考えた私なの。


   ◇◆◇◆◇◆◇


「そうだったんだ……」

「二人、同じ思いを抱えていたの」

「知らなかったわ」

「でも、ナミリアのこと嫌いなわけじゃないの」

「良かった。てっきり嫌われているかと思ってたわ」

「ナミリアは凄いの。ナミリアほど努力している人は知らないの」

「私だって、シャノンのことは尊敬しているわよ。つい、からかいたくなっちゃうのは、シャノンちゃんが可愛いから。私も好きよ」


 二人はグラスを鳴らす。


「私たち、ライバルね」

「そうなの、でも――」

「本当のライバルは他にいるのよね」

「強敵なの」

「しかも、私たち、離れなきゃならないしね」

「そうなの。私は明日、この街をたつの」

「私も、ぼちぼちなのよね」

「…………」

「…………」

「大丈夫よ。まだ、きっと、チャンスはあるわ」

「そう思いたいの」


 ――それから、二人の作戦会議が始まった。


 夜は長い、二人だけの女子会はまだまだ続きそうだった。






   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】


次回――『第9章キャラ紹介』


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