第159話 エルティアとプレスティト
【前書き】
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――ガチャリ。
ノックもなしに執務室の重厚な扉が開く。
ここはウィラード伯領都にある冒険者ギルド。
ギルドマスターの執務室だ。
デスクに伏せていたギルドマスターの女性は慌てて上体を起こす。
急いで眼鏡をかけ、羽根ペンを掴み、書類に視線を落とす。
いかにも仕事をしてましたよ――と取り繕うように。
「ペン、逆ですよ」
無遠慮に入ってきた少女は冷めた視線と冷たい声で指摘する。
エルティアは慌ててペンを持ち直そうとして肘が当たる。
当たったのはデスクに山積みされた書類だ。
書類の山が雪崩を起こす。
親子の目が合った。
「なっ、なんだ。プレスティトか。驚かすな」
「またサボってましたね」
プレスティトは母に呆れた視線を送りながら、床に散らばった書類を拾い集める。
「まったく、毎日ちゃんと仕事をすれば、こんなことにはならないのに」
「むぅ。私が悪いのではない。デスクワークが私を嫌っているのだ」
「ただ書類にサインするだけの仕事をデスクワークとは言わないです」
「…………」
「本当のデスクワークは全部私がやってるんですよ」
「それは……感謝する。だがな、母親に対してその言い方はないだろ」
「だったら、そう言われないようにしっかりしてください」
プレスティトは書類をデスクに積み上げていく。
「まあ、小言はこれくらいにして。先日のラーシェス嬢の件です」
「なんだと?」
「魔力が枯渇している状態が続き、衰弱しきっています」
「なんだ、そんなことか。なら、魔力回復ポーションを飲めばいいじゃないか」
「アホです?」
「なんだと!」
「それくらいで治るなら、わざわざ報告に来るわけがないでしょ。そんなことも分からないんですか?」
「なら、アレだ! たくさん飲めばイイ! どうだ、このアイディアは。少しは母を見直したか?」
「ええ、私が間違っていました」
「そうだろ、そうだろ」
「私の想像以上におバカでした」
「なっ、バカって言った! バカって言った方がバカなんだぞ」
「子どもですか?」
「むぅ。なら、これは――」
必死になってアイディアをひねり出そうとするが、プレスティトはそれを一蹴する。
「ああ、もう良いです。どうせ愚にもつかないことでしょ。別に、愚母の意見を求めに来たのではありません。私は報告に来ただけです」
「プレスティトはどうするつもりだ?」
「最有力候補はエリクサーです」
「エリクサーなら私も知っておるぞ」
「ええ、一年目の冒険者でも知ってますからね」
「でも、アレは入手が難しいんじゃなかったか?」
「凄いですね。よく知ってますね。エライエライ」
「なんかバカにしてないか?」
「ええ、してますよ」
プレスティトによって積み上げられた書類は、来たときと同じように山を築く。
「ともかく、素材のひとつはニーラクピルコ森で手に入ります。後は買い付けるしかないでしょう」
「よし、なら森でそれを取ってくる。どんなやつだ?」
「薬草採取も満足にできないくせに?」
「むぅ。悔しいがプレスティトの言う通りだ。壊すのは得意なんだがな」
「その素材は森の奥に生えているので『双頭の銀狼』に依頼しました」
「おお、彼らなら問題ないな」
「とまあ、そういうわけで、母上はこっちに集中してください」
プレスティトは書類をパンパンと叩き、母を叱る。
心底嫌そうな顔をするエルティアを無視して、プレスティトは執務室を後にした。
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【後書き】
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