第6話 強制徴収

 エムピーがちっちゃな指をひとつ立てる。


「一つ目は、一定量以上の魔力貸付があること」


 そして、二本目の指を立てる。


「二つ目は、激しい感情とともに心の底から返済を願うこと――ですっ!」


 エムピーは立てた二本の指を広げVの字を作った。

 にぱーっという笑みを浮かべて。


 この五年間、毎日ヤツらに魔力を貸してきた。

 一日当たりは大した量でなくても、積み重なれば相当な量になる。


 そして、今までもなんとなく、「貸した魔力が返ってこないかな」と思ったことは何度でもあった。

 でも、今日はかつてない怒りとともに、初めて「返せッ!」と心から訴えた。


 それで――進化したのか。


「ご納得いただけたでしょうか〜?」

「ああ、納得した」


 それと同時に、喜びが全身を包み込む。

 俺は生まれ変わったんだ。

 SSSランクで、しかも、ギフト妖精がついて来た。

 今度こそ、今度こそ、冒険者として活躍できるかもしれないっ!


「では、ギフトの詳細をご確認下さい〜」

「ああ」


 ステータスに表示されているギフト欄に指を当てる。

 こうすることによって、使用可能なスキルが表示されるのだ。


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《無限の魔蔵庫》


【能力補正】:1時間で最大魔力量の2割の魔力が回復する。《NEW!》


【スキル】


 魔力貸与(LV1):パーティーメンバーに魔力を貸与する。

 強制徴収(LV1):貸し出した魔力を強制徴収する。《NEW!》


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 おおっ!

 通常、魔力は1時間で1割しか回復しない。

 だけど、【能力補正】で魔力回復量が2倍になっている!!!


 【魔力貸与】は元からあるスキル。

 効果はその名の通り。

 俺はこのスキルで仲間たちに魔力を与えていた。


 新しく覚えたのは【強制徴収】スキルだ。

 そこに書かれた説明文を読んで、身体が震える。


 これで俺の願いが叶う。

 今まで貸すだけだった魔力を返してもらえるんだっ!


「マスター、黒い笑顔になってます〜」

「ああ。さんざん貸し付けてきたんだ。今度は返してもらう番だよ」

「その容赦のない笑顔、しびれます〜」


 なにか二人で悪巧みをしているような気になる。

 だが、これからするのは悪事でもなんでもない。

 正当な取り立てだっ!


 あれだけ虚仮こけにされたんだ。

 容赦する必要はこれっぽっちもないっ!


「では、徴収方法の相談に移りましょう〜」

「ああ。お願いするよ」


 ステータスの【強制徴収】に指を当てる。


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 【強制徴収】:LV1


 【概要】:以下のいずれかの方法で貸付魔力を徴収できる。


  ・一括払い

  ・分割払い

  ・リボ払い

  ・最適プラン


 【徴収可能魔力】


 ・貸し付けから1年(月締め)経過した魔力


 【上限利率】

  ・トイチ《複利》


 【貸付状況】


 ・『断空の剣』:


  貸付量  :2,678,078MP

  徴収可能量:1,435,837MP


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 【概要】を読んでみて、なんとなくは理解できた。

 「一括払い」や「分割払い」は、まとめて払うか、何度に分けて払うかの違いだろう。

 だが、「リボ払い」という言葉には聞き覚えがない。

 それに、「最適プラン」とはなんぞ?

 「トイチ」も「複利」も聞いたことがない単語だ。


 そして――。


 【貸付状況】を見て、俺は衝撃を受けた。

 アイツらに267万MPも貸してたのかっ!

 塵も積もれば……というが、まさか、そんなに貸してたとは思いもよらなかった。


 そりゃそうだ。

 これだけ貸してたんだから、ヤツらのバカげた成長速度も納得だ。


「詳しく教えてくれるんだよね?」

「もちろんですっ!」


 エムピーがぱぁーっと笑顔の花を咲かす。

 こんな純粋な笑顔を見たのは何年ぶりだろうか――。

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