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〜6年前〜
翔16歳
日本の暴力団は過去一の組数でいまだ増えている
この時期、普通に暮らしている人々には、あまり知られていないがヤクザは完全に2分割されていた
警察運営ヤクザの本ヤと昔ながらのはぐれヤクザ、ハ組
本ヤは数が多く、警察上部から流れてくるシャブや薬で売上を出しており、全国どこを見ても本ヤは裕福で羽振りが良い
さらに政治家の大半が警察と協力関係にあり
裏ではキャバや風俗、クラブなどの事業を一挙に担っており、表には出ないがやりたい放題だ
一方で翔の育て親
松 丈一郎(まつ じょういちろう)が頭の
ハ組系、 松組は
「はぁー。今月も赤字じゃねーか。
ったく最近じゃ大したシノギもねーし、バイトでもすっかな」
っと悪態をつくのか翔のオヤジ、丈一郎
背は高く顔は切り傷多数でいかにもってかんじ、昔っから変わらない
東京の田舎で松組というヤクザの頭(かしら)をやってるが、時代が時代でシャブやケツモチは規制が厳しくハ組じゃ出来ない
どこのハ組もそうだがシノギと言えばBARやスナックでおしぼりを売ったり、闇金業で金を得るくらいだ
正直、普通に働いた方が稼ぎは良い
ただ一度、組に入ったらカタギにはなれない
そもそも昔と変わらず通帳も作れないからローンも通らない
唯一まともに暮らしたいなら警察運営に協力する本ヤになるしか道は無い
「何言ってんすか頭(かしら)!ヤクザがバイトなんてやってたら笑いもんすよ」
舎弟の男が慌てて言う
すると翔も
「そうだぞオヤジ。そもそもそんな傷だらけの汚い顔でバイトなんて雇ってもらえるわけないだろ」
「なんだと?汚いは余計だバカ
ったく、昔は可愛く懐いてたのにいつからこんなクソガキに育ったのやら」
俺の顔を見ながら愚痴るオヤジ
「4歳でお前を引き取り、何不自由なく生活させ、欲しいものをあげ、喧嘩を教え、立派なヤクザに育ててやろうと勉強まで教えてやったのに」
すると舎弟の1人が翔に小声で
「いやいや、ぼっちゃん。頭(かしら)は大好きなぼっちゃんのために何としても俺らみたいなヤクザにならせないよう勉強を教えたり塾に通わせたりしてるんすよ。
挙句の果てには偏差値の高い私立に入学させるため節約までする始末。笑っちゃいますよね」
ニヤニヤしながら言う舎弟に
「ば!バカヤロてめー」
聞こえていたのか顔を真っ赤にするオヤジ
正直、前々からそのことは分かっていた
昔からオヤジは俺に甘い
成長するにつれ俺も松組を継ぐのかと思っていたが
オヤジが教えるのは一般的な常識や勉強のこと
あげくに6歳から10年間も塾に通わせたり英会話の家庭教師も付ける始末
そんなことをされれば嫌でも気付く
今の時代、松組のような小さいヤクザは経営が厳しい
そんな将来のことを考えるオヤジは
俺をヤクザではなくカタギで普通の道を望んでいるのだと
面と向かっては言えないが感謝している
恥ずかしいから口には出せないけど
ありがとう...
ただ気持ちとは裏腹に出るのは
「ほー、オヤジはそんなに俺のことを思ってくれてたんだな」
まったく俺は
「バカやろ、そんなんじゃねえよ
コイツはどんだけ喧嘩を教えても全然強くならねから...
何かしらと思って勉強させてるだけだ。
そ...それに今じゃインテリヤクザの方が稼げるしな」
顔を真っ赤にしたオヤジは舎弟を殴りながら俺に説明するが
みんなニヤニヤしている
こんな日が毎日続くと思っていた
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