2

暗い部屋の片隅に置かれた椅子

それに座る22歳くらいの男

そいつは、くしゃくしゃなタバコを取り出し火をつけた

大きく煙を吸い、深呼吸でもするかのように吐き出して

遠くを見ながらぼーっとしていた

寝不足なのか目は閉じかけている

その男は、ふと小さい頃のことを思い出していた



〜過去〜

ボロいアパートの一室

「おいこら!酒がねーじゃねえか!」

ガンっと音を立ててビール瓶が転がる


俺の父親はクズだった

仕事には就かず、酒を呑んでばかり

ドラマや漫画に出るようなゴミ


金は母親が稼いでいた

すごく優しくて綺麗な母親だった

何故こんなクズと結婚したのか分からないほどに穏やかな性格で優しかった

だが...朝晩ずっと働く母親に対して、

わずか3歳の俺でも可哀想に思え、甘えられなかった



そんなある日、ギャンブルと酒で借金を増やした父親にヤクザの取り立てがきた


ドンドン!


「おいっ!居るんだろ!さっさと開けろ。

いつもいつも逃げやがって。いい加減、借金返せねえなら臓器でも売るか??」



はぁ、また怖いおじさん達がきてる

そんないつも通りの日常だと思っていると

今日は違った


父親が家の鍵を開け

「す、すいません。もう少しだけ待ってくれませんか?...お金がなくて返せま『ガンっ!』

ゔぁ!」


「金がねえじゃねえんだよ。毎度毎度。

悪いがさすがに時間切れだ」

と近くにあった木刀で父親の顔を殴る

いきなりの衝撃に父親は倒れる

「がはっ!ごほ...す...すいません」


「すいませんだ?

すいません、すいません。って何度聞いたか!お前はそれしか言えねえのか?もういい!」

呆れてそう言うと、男は周りを見渡す


ふと自分を抱き抱える母親に目がとまる

そして上から下までゆっくりと舐め回すように見た


「へー。ちょうどいいや。お前の嫁もらってくぞ。

これで500万の借金チャラにしてやるよ」

と言いながら俺を母親から引き剥がす


母親はまだ23歳で若く、

綺麗で細い


「顔も体も悪くない。むしろ高く売れそうだな。おい!なんも文句ねえよな?」


「きゃ!やめてください。

許してくだっ...あっ!」

母親は抵抗しようとするが

男は母親の頬をはたき、服に手を突っ込み胸を触る

そしてゆっくりと父親に目を向ける



「ママに乱暴するな!」

俺は小さいながらも母を助けようと

男の足を叩いたが


ドコっ!


「わぁ...」

何もできずに蹴られて尻もちをつく


悔しさと痛さで涙が出てくるが、ぐっと堪え父親に助けを求めるように見る


一連のやり取りを見てた父親はボソッと口を開く

「あー...それ、...で借金が無くなる。...なら持ってってくれ。


助かるよ」


父親の口から出たのは、衝撃的な言葉だった


いや、もうこの時には父親とは思えず、ただの他人...

そう感じていた


そこからは、あまり覚えていなかった


泣きながら許しを求めたが、男は母親を連れて行き

父親は別のところでも借りていたらしく

あっけなく他のヤクザに殺されたようだった



その結果、残された4歳になったばかりの俺は、孤児院に入れられる


予定だった... が

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