掌編小説・『銀行』
夢美瑠瑠
掌編小説・『銀行』
(これは、2019年の「銀行の日」にアメブロに投稿したものです)
掌編小説・『銀行』
私は大銀行の預金係で、西部・真禰絵(せいぶ・まねえ)、といいます。
銀行の預金係が、0.00いくつの預金の端数を細かく集めて、横領する、とかいう話をよく聞くのですが、どういう風にやるのか?
最初私は見当がつかなかったのですが、これは要するに利子の話なのだなー、と、だんだんわかってきたのです。例えば125万1357円預金があれば、もし利子率が0.043%だった場合に、1251357*0・00043=5・2948351になって、29銭の端数が出ます。これは四捨五入するか繰り上げることになっているのですが、そこのところをネコババしてしまうとします。顧客は何千人と居るから、銀行内のコンピューターのネットワークに細工をして、その端数が全て私の口座に振り込まれるようにするとします。様々なタイプの預金やら貸し付けがあるから、
悉くにそういう作業を施せば、まあ一日に万単位のお金になります。
そのチリツモで、年間にすると何百万という額が、ほぼバレずに完全犯罪で横領できるはずなのです。違法かもしれないけど、数字のマジックだけで、誰にも迷惑はかけていないわけだから、バレても軽犯罪で済むのではないかなあ…
ただ、銀行を首になっては元も子もないので、私も実行をためらっているのです。
で、考えたのは、「銀行員全員で山分けをすれば・・・」という策略ですが、これだと実入りが極端に少なくなるし、監査というものもあります。
で、さらに考えたのは、日本全体のそういう預金やら貸し付けの利子、全てを、細かくチェックしてそういう端数の何十銭のチリツモを善意の寄付とする、という法律を制定して、財団とか基金を設立すればどうか、ということです。
で、それは「コンピューター犯罪防止」のためにそうした趣旨で活動する資金にするのです。
で、わたしたち銀行員の、退職後の天下り先というか第二の就職先にするのです。
どえらい大金持ちの財団になるはずで、しかもどんどん元金は右肩上がりに増えていく。
収益金が増えてくれば、会社を作ったり、預金者に配当金?を還元したりする。
わたしらはお金のプロだから運営にも自信があって、儲かること間違いなしです。
お金というのは回りものだからとにかく動かせばうまくいくようになっているのだと思います。
うまくいけば、これで不景気も解消できるかも? とかオプティミストのわたしは考えたことでした…
善意の寄付、と言って普通は1円玉しか出さない人が多いですから、最高で99銭を強制徴収すれば普通の募金よりずっと速くたくさん貯まっていきそうな気がしますが…
自分のことだけ考えていたら犯罪になって不幸になるけど、人々や社会のため、と考えて行動したら結局自分も幸福で金持ちになるのかなあ、とか思ったことです。
<終>
マイナス金利?ホントの金庫番になっちゃいましたね
掌編小説・『銀行』 夢美瑠瑠 @joeyasushi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます