第66話 手に入れたマップ

 何で最新ゲームの中身とダンジョンの中身が似ているのかは解らない。

 色々推測されていたがどれも仮説だ。


 仮説でも何でも結果に結びつくのなら、使えるものは使うのが社会に生きる大人のやり方だ。僕ちゃんそういうの嫌いだな。


 手配された組立てバイク。

 今後俺はこのバイクでダンジョン探索を勧めることになる。

 セントルシフなる山を目がけて。


 ドローンで集めた情報とハーネットの情報を元につくったマップを頼りに。

 行く身にもなって欲しい。仮説で終えずにちゃんと検証しようよ。

 不安しかねえんだが。


 ダンジョン内でトラブルがあっても助けてくれる人はいない。

 だから現状俺が受けている訓練はバイクの組立てと分解。そしてその際起きたトラブルへの対処がメインだ。


 ダンジョン潜ってバイクが動きませんってのは確かにどうかと思う。

 だが、見知らぬ場所に向かうのだ。

 戦闘訓練にも熱を入れるべきではないだろうか?

 「戦闘訓練? 君なら大丈夫さ」じゃねえよ……ざけんな。


 戦闘訓練が好きってわけじゃないが、それは別として本気で自衛隊がとんでもねえブラックに見えてきた。

 国家権力じゃなかったらまた脱走してるところだ。


 そうそう。

 訓練とは別に会議がもう一回あって。昨日の事なんだけど。


 そこでは俺がダンジョンで見たロボットが話題に上がっていた。


 銃撃で傷一つつかなかったロボット。

 その材質だけでも技術の塊だ。因みに飛来物も同じ材質で出来ていると考えられているらしく、当然自衛隊の物欲センサーがリミットを振り切ったのだが。それだけでなく、歴史的価値としてもとんでもないものだったらしい。


 簡単にいうと丁野教授の持論を証明するに値するものだとが。


 丁野教授は日本の神々は宇宙人説を唱えていた。

 だが、ゴブリンの元、つまりグレイが人間を率いていたというのはかなり考えにくい。自分達とまるで姿形の違う存在をそもそも人が歓迎しますか? と。


 だが、その姿がめっちゃ鎧武装した人間っぽい者だったとしたらどうだろう?

 見た目は人間だと思える存在だったら。


 まだ文明と呼べるものもない時代。

 石器や木を道具に原始的な活動をしていた我らが祖先。青銅器くらいは使ってたかな? 知らん。

 そこに、全身金属で固めた人間大の二足歩行が近寄ってくる。


 警戒した者はいるだろう。攻撃した者もいるかもしれない。

 でもあのロボットなら関係なし。だって銃撃すら効かねえんだもの。


 そしてロボットが言うわけだ。「我らに従え」と。

 まあ、逆らえないわなぁ。


 そしてロボットに乗ったグレイ達は人を率いた。目的は解らんが。


 因みにロボットは画像ではパールホワイトって感じだった。

 表面に虹色の光を纏い、光を反射すると赤味を帯びた金色に見える。

 だから外では金色に見えていることの方が多い。俺が金色って思ったのもそのせいみたい。


 で、この朱の金色を古代では日緋色ひひいろと呼ぶらしい。


 そう、あの今やファンタジーでしか出てこない、昔は実在したと言われるヒヒイロカネの日緋色。


 俺が倒したロボットはドローンに間近から撮影され、おそらくダンジョンは古代からあったものだろうと考えた鬼山二佐は丁野教授に連絡。


 国家権力を傘に着たかなりのごり押しの末、熱田神宮に保管されている本来誰も見る事が許されない天叢雲剣を見て、同様の材質と判断したそうだ。


 失われた技術、ヒヒイロカネ。古代の神々の武器の材質。

 教授の中では点と点が線で繋がっちゃったようで。


 色んな意味で魅力的なロボット。

 要は会議はそれだけあのロボットは重要だよってことを俺にアピールするためのものでもあったらしい。


 だから鬼山二佐が俺に目を合わせ、


「というわけで久留井君。なんとかあのロボットを持ち帰ってはもらえまいか?」


 って会議の最後に締めるように言ってときは、流石に言ったよね。


「重さ的に無理です」


 場がシーンってなった。

 鬼山二佐の目が驚くように見開いていたのは、命令は絶対の上下関係が築かれた自衛隊で自分の指示を断る部下がいることに対してか、単純に盲点だったのか。


 色んなところからつつかれて視野狭窄になってるんじゃないかと心配になる。

 一度鬼山二佐にはしっかりとお休み頂きたいものだ。


 まあ、剣位は持ち帰れたかもな……

 ……剣、か……





 休みは俺にだって大事なものだ。

 訓練漬けとはいえ休暇はある。

 そして今日はその休み。


 休みの日は自分への御褒美に八須賀さんの店に行くのが、最近の日課だ。


「いらっしゃい」

「どうも。八須賀さん」


 カウンターに座り、いつものネギラーメン餃子定食を注文する。


「毎度あり」


 ここのラーメン旨いんだよね。

 コシのある麺と、それに負けない出汁の効いた少し濃いめの醤油味。

 俺好み。


 欠点は時々アイツが隣に座ることくらい。


「あ、カブトさん」


 来やがったよ。


「……久しぶり」

「ハチスカさんも」

「いつもありがとよ」

「えへへ。あ、注文いいですか? チャーシュー麵大盛り、チャーシューと角煮と煮卵追加トッピング。あと餃子とチャーハンと唐揚げとエビチリと豚キムチ」

「あいよ」


 ……増えてる。


 桑野さんの注文は桑野さんの売り上げに比例する。

 つまり、また儲けが増えているって事か……


 世の中って理不尽だよな。

 ネギラーメンを啜りながらそう思った。

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