手から落ちたのは何

 帰り道。空いてる電車に乗れたので、私は座って、微睡んだ。

 ひとつずつ、少しずつ。積み上げるような、重ねるような。

 石畳を歩くような夢。


 いつも不安な足元が、かっちり固くて安心だった。幸せだった。


 だけど、うっかりスマホを落としそうになって。

 慌てて起きると、


 私の両手は空っぽだった。最初から。


 夢の記憶も無くなった。

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