玄関先の境内にて。
家の前にある大きな神社。その境内にて、超大物お笑い芸人がテレビのロケに来ていた。
たまたま外出していたうちの家族と近所の人たちは、なぜかクイズに参加することに……。
「では、魔王幹部が勇者パーティーとの最終決戦で使った切り札は何?」
「…はい、『オートバッテリー』?」
「……正解!通称『ボブ』ね。
狭い魔王城内では、我々も彼女のあのキュートなお尻に大変苦戦しました」
広い境内の砂利道に、等間隔に並んだ私たち。運動会の準備体操のときの整列をしているみたいだった。
テレビのロケをしているようには見えないからか、まばらにいる参拝客たちは大物芸人の目の前も横切っていく。そして、過ぎてから、ハッとした顔で肩をすくめて歩み去る。
そんな中、青い瞳で欧米系の整った顔立ちの男の子がソフビの人形を握りしめて、通りすがった。彼も他の人同様、横切ってから、気づいた様子。ただ彼は、目を見開くだけでなく、白い頬をリンゴみたいに真っ赤に染めて、泣き出してしまった。
お母さんらしき女性がなだめるも、火がついたように泣き止まない。私たちの方を見ながら、泣き顔で歩いていった。
「かわいいね」
真っ赤な顔で、目を見開いて泣く彼に、手を振りながら、家族と話す。そして、ちょっとした世間話をしながら、家へと戻った。
ガチャンと、玄関扉を閉めてから、ふと思い出して、顔を見合わせる。
「ロケ中なのに、黙って帰ってよかったん?」
ちなみに、我が家の前に神社はない。
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