はす向かいの面の男

 無垢の机にテーブルクロス。


 白いお皿にプレーンドーナツ。

 少しフニャっとして見えるのは、水が多めの失敗作か。それとも揚げずに焼いているのか。


 白いお面の長髪男性。ワックスの効いたオールバック。

 姿勢崩さず、グラタン掬って、口に運ぶ。

 すると、だんだん右目が爛れていって、溶けたそこは暗闇に。黒い炎が揺らめいて、奥の瞳が黄色く光る。

 左目こっそり私が掬うと、ポロっと取れて、ぐにゃっと落ちた。取れた目玉は食べぬまま。動じぬ彼はグラタン食べる。


 私のお腹がギュルギュル鳴った。

「それもいいけどドーナツ食べたい」

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