<9> 【大団円】は突然に
私は聞きたい。
知らず手指が動く快い
出会いは偶発的必然。
画面越しに目を瞠り、口はだらりと舌さえ緩み。
放心のち涙。
あぁ、出来うることなら、私の作品にその声を。
願いつつ描いた悪役令嬢は、無声にての登場で。
しかし
「さぁ、」
私、フォンテーヌ公爵令嬢オリアンヌを取り囲むみなに呼び掛ける。
完璧な
異世界転生は、或いは僥倖。
私の意思で、彼女が喋る。
声を、その声を、夢にまで見た響きを、手に入れて。
ならばすべてを得なければ。
際限ない欲望、果てのない探求。
あらゆる様式の声。
自らの意識下で発せない声、悲鳴、嬌声、喘ぎ、それから、腹から肺から押し出された空気が漏れただけの、ただの息遣いすら。
「さぁ、みなで一斉にピーをピーしてピーピーするのよっ」
玉座を降りた王は、爛々とその時を待つ私に近づき、王冠を外して私の上に載せる。
「なに……を」
期待する罵声、暴力的な咆哮どころか、ただの一言もなく王は背を向け立ち去り、騎士や衛兵は跪いた。
王の間にて仰ぎ見られるは、悪役令嬢と主人公のみ。
「王は託されました。
元より器が違う、ふたりの王子の何れかを
「でも、貴女は……」
クラリスは再び鈴を鳴らす。
「私の望みは貴女さま。
……御子をお産みください」
「王子を貰う、と」
「さすればこの国は安泰となりましょう。
貴女さまの望みも……例えば
「
「
なんてこと……
形は違えど、望みが叶う。
快楽への期待に胸も腹も喉も熱くなり、我知らず身体を抱き。
初めから、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます