<5> 【追放エンド】はナレ死
「殿下、わたしの作法はいかがでしょう」
「あぁクラリス、愛らしさに加えて気品まで……私をどうしようというのだ」
睦言のような戯れ言を臆面なく晒すふたりに、
庭園
「兄貴っそろそろ説明しろよっ」
と、ころころからから中身の萎んだ木の実の談笑に闖入者。
この
「騒々しい。ご令嬢が怯えるだろ?」
「公爵令嬢なんて聞いてない。生意気な女を倒してこいなんて」
「負けてりゃ世話ないな」
クスクスと
どぅんっ、どかっ。
吹き飛ばされ、私のすぐ側の木にぶつかり倒れる。
「殿下にもクラリス様にも近づかないでいただきたい……」
「興が削がれた。場所を変えよう」
冷えた高音を鳴らして、王太子は主人公をエスコートする。
攻略者三人に先導されるクラリスは、去り際に茶色の長髪を揺らして顎の形だけで解る
「うぅ……」
「バルサン様、」
呻き声。打つけ処が悪ければ命に関わる。
医務室にて回復魔法を受けさせるか、誰か連れてくるか——
近づいて、その姿に息を呑む。
どくどく頭から流れる
記憶が、喚起される。
真っ黒な画面に白抜きの文字。
「クラリスは涙ながらに断罪しなくてはならなかった……」
漏れ出る
主人公が
その実、最後まで王太子妃の座を諦めず、裏でクラリスを貶める噂を流し、宝飾品泥棒の濡れ衣を着せ、遂には暗殺者を雇う。
クラリスは、攻略者たちの協力により策謀を暴き、証拠を突きつけ、自ら断罪する。
「大悪女、フォンテーヌ公爵令嬢は王都追放処分となり……」
常春の島国トルネラでは珍しい、雪が降る山岳の村へ追放される道中で山賊に襲われて殺される。
黒い画面が吹雪を表す一面の白に変わり、真っ赤な
一枚絵さえ用意されず、
後顧の憂いを断ったクラリスは王妃となり、実質的に王宮を掌握する——
宝冠を頂いた王妃の艶麗な笑みが、私の意識を奪った。
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