追放ハーフエルフは南の島でスローライフ~魔術の使えぬ無能だとエルフの里を追放されましたが実は天才植物使いです。追放先のジャングルで建国したら、移住希望者が多すぎて困ってます~
第42話 因縁の対決ってやつなのかな、興味ないけど
第42話 因縁の対決ってやつなのかな、興味ないけど
突然私の背後をとったかと思えば、私に復讐するって? 意味が分からない。
「私、ミルドルドになにかしたっけ? まったく身に覚えがないんだけど」
「したさ。貴様が居なくなってから起きた農業不振にモンスターの襲来で俺の地位はガタ落ちだ。そのうえ俺たちが追放した貴様がこの里を救うなんてしてみろよ……俺たちがこれまでやってきたことはなんだったんだって、そうなるじゃないか……」
「……完全に自業自得じゃない? 私を追放したのは君たちだろうに」
「ふっ……そうかもな。俺はこれからその責任を負って重い罪に問われるだろう……だが、この俺がそんな終わり方をするものかッ! 俺は落ちぶれるくらいなら、この里もろとも滅ぶことを選ぶッ!」
「里と無理心中か。巻き込まれる民はいい迷惑だね」
「ハハッ! 知ったものかそんなゴミどもッ! 俺を信奉しない無能なザコどもは俺の世界に必要ないんだからなぁッ!」
狂ったように笑うミルドルド。いや、実際もう狂ってるのかも。高さだけはいっちょ前のプライドを何度も何度も折られ続けて、きっともう真っ直ぐ立っていることができなくなったに違いない。
「ラナテュール、確かに貴様は植物を操ることのできる特殊能力者だったらしい……だが、それがどうした? 貴様の命はいま、俺のてのひらの上にある。結局は実力なんてものは魔術が使えるかどうかなのさ! 貴様はこの俺より下の位置にいるエルフなんだよッ!」
「……」
「どうせ貴様を追放した俺たちの末路を見てせせら笑っていたんだろうッ⁉ エルフの里が滅びかけて、俺の無能さが明らかになったことがさぞかし嬉しかったんだろうッ⁉ だがどうだ、結局のところ貴様は俺に殺される! いまの気持ちを聞かせろよラナテュール! 自分が笑っていた人間に殺される気持ちはどんなもんだ、エェッ⁉ ラナテュールよぉッ⁉」
「いまの気持ち? そうだね……さっさと撃て、かな」
「…………はぁ? いま、なんて言った……?」
「さっさと撃てって言った。あのね、いい加減耳ざわりだよ。撃つならさっさと撃ってくれないかな、ミルドルド。私には壁を作る作業が残っているんだ」
「……こ、の……ッ! どこまでもコケにしやがってェェェッ!」
ミルドルドがブチギレる。その瞬間、空中に展開された魔術陣から光り輝く幾十もの矢が飛び出てきて私へと降り注いだ。
それは大規模でありながら威力・速さも申し分ない魔術。さすがエルフの里で一番の魔術師をうたうだけのことはある。
「──まあ、それだけだけどね」
「んなっ……⁉ なぜ、なぜ死んでいないっ⁉ ラナテュールッ‼」
私の身体は無傷。矢の1本すら突き刺さっていない。その理由はまあ簡単なことだ。
「私の服ね……これは【ウマノオノヒザラシ】という繊維のように細い植物を編み込んで作ったものなんだけどね、この状態でまだ生きてるんだよ」
服にマナを与えてやる。すると私の思い描いた通りに服はその形を変えて傘のように私の身を覆った。
「非常時のちょっとした盾の役割を果たすことができるくらいには丈夫だし、仮に破れたりしてもマナを与えてやればすぐに元通りになる便利な服さ」
「そんな……っ! 卑怯だぞ、ラナテュールッ!」
「いや、堂々と背後をとってくるようなヤツに言われてもなぁ……」
とりあえず動けなくしておこう。デザートポプラの根を操って、シュルシュルシュルっとミルドルドの両手両足を縛り上げて空中にその身体を固定する。
「なっ⁉ クソッ! 放せッ!」
「あ、そういえば……物理的な拘束は意味ないんだったっけ? ならもうちょっと念入りにやっておこうかな」
地中からもう1本、鋭い先端を持つ根を突き上げて……えいっ。
「──んォォォオオオンッ⁉」
ブッスリと、排せつ口……まあつまり肛門へと深くぶっ刺した。
「分かると思うけど、ミルドルド。両手両足の拘束を解いたら串刺しになるからね? 尻に入ったその根っこを口から『こんにちは』させたくなかったら、下手なマネはしないことだ」
「ンォォォッ……」
聞こえているのか聞こえていないのか分からない言語体系を崩壊させたような返答だったけど、まあ理解したと受け取っておこう。
さあ、ようやく壁づくりを再開できるぞーっと、そう思った矢先のこと。
「──ラナテュール様ぁっ!」
「──ラーナっ!」
今度は農業エリアにモンスターを狩りに行っているはずのリノンとアウロラが走って戻ってくるではないか。
「なになに、どうしたの? 今度はなにが来たの?」
「あれっ! なんかものすごくデカいのが入ってきちゃったんです……!」
「デカいの……?」
リノンが指を差す方へ目を向けると同時、ズシンッ! という地響きが轟いた。
そして、ヌッと顔を表すモンスターの顔。
「もしかして……
ドラゴンに並ぶ伝説のモンスターが、そこに現れた。
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