追放ハーフエルフは南の島でスローライフ~魔術の使えぬ無能だとエルフの里を追放されましたが実は天才植物使いです。追放先のジャングルで建国したら、移住希望者が多すぎて困ってます~
第34話 バトルド・コロッセウム決勝戦だよ
第34話 バトルド・コロッセウム決勝戦だよ
ガルディアが私に向かって、
これはあまり近くに寄られる前に止めた方が良さそうかも。
「ピンキーちゃん、よろしく」
〔ピギィ!〕
ピンキーウィップと化したピンキーちゃんが私の服の袖から素早くツルを伸ばす。しかし、
「はぁっ!」
ザシュッ。ツルはいとも容易く斬られてしまった。
「ピンキーちゃん、本数を増やそう」
「ピギィっ!」
シュルシュルと、何本ものツルを上下左右からガルディアへと仕向けた。
「く……っ!」
ガルディアは苦しそうに息をもらしながらも、ザシュザシュザシュと次から次へとツルを斬り伏せていく。しかし、あまりの数の多さにその足は止まった。その隙を私は逃さない。マナを込めた種を蒔く。
「──ラストっ!」
ザシュッ! と勢いよく剣を振るい、ガルディアは襲い掛かるすべてのツルを真っ二つにした。
「ラナテュール選手殿、どうやらツルはもう打ち止めのようだな。どうする、降参するか?」
「いや? 勝負は最後まで分からないよ」
「そうか……それでは、参るっ!」
再び地面を蹴って距離を詰めようとするガルディア。しかし、
「っ⁉」
ズシャアッ! と、その身体は前のめりに転がった。
「なっ、なんだ……! 足になにかが絡みついて、動けない……っ?」
「それはね、【デザートポプラ】っていう木の根っこだよ」
「木の根っこ……っ⁉ そんな、いつの間に……!」
「君が私のツルに応戦して足を止めてる間に種を蒔いてね、地面の中で素早く成長させて君の足元まで伸ばし、それからこうクルクル~っと」
「あ、あの時にか……っ!」
茶色いその根っこは、次第にガルディアの身体、そして腕までをグルグルと巻いていく。
「これでもう身動きは取れないよね?」
「……っ! ああ、降参だ……っ」
ガルディアが悔しそうに剣を落とし、そしてそれとともに観客席が沸き上がる。
「──決着だぁー--っ! ガルディア選手が降参を宣言! その結果、優勝は……ラナテュール選手ー--っ!」
割れんばかりの拍手と喝采に包まれる会場。こういうのっていままでになかったなぁ。
「──それでは優勝者のラナテュール選手へと賞金と記念メダルの授与を行います」
私がガルディアを木の根っこから解放し、そして会場に主催者たちが降りてくると、すぐに授与式が行われた。
「優勝おめでとう」
主催者から賞金の入った紙袋を受け取り、首にメダルをかけてもらう。
「それでは優勝者からひと言をもらおうか。これは音響拡大魔術の込められた道具だ。これに向かって話してくれ」
「どうも」
私は手渡されたその道具を口元まで持ってくる。そして観客に向かって言うべきことはひとつ。
「──美味しい美味しい野菜や~果物は~いかがでしょうか~」
直後、会場がシンと静まり返った。まあ、私は気にしない。
「──エルフのノウハウを使って育てた野菜と果物はどれも一級品~食べればたちまち身体は強く~治る病気だってあるくらい~栄養満点なものばかり~なにを隠そうこの私も~それらを食べたおかげで~こんなに強く育ちました~」
ちょっとだけ誇大広告。本当は栄養満点だから病気に効いたり気力が満ちたりする程度だけれども、でもまあこれくらいが話題性としてはちょうどいいだろう。
こちらの狙い通り、ざわっと会場がどよめいた。
「マジか、強くなれるの?」
「俺知ってるよ、エルフの里の野菜とか果物って大陸じゃかなりの高級品らしい」
「この町で売ってるのか? どこで?」
よしよし、食いついてきたみたいだ。もうあと一押しだね。
「──ただいまから~数量限定で~エルフ仕込みの野菜と果物の販売を~この会場の外で行います~ぜひお買い求めください~目印は私~ラナテュールです~」
ふう。言えた言えた。やりたいことが全部できた。なんせ大勢の人の前で村の野菜と果物をアピールしたいがためにこのバトルド・コロッセウムに出たのだから。
「あ、この道具ありがとうね」
「え、あ? はい……」
キョトンとした目の主催者に声を拡大するためのその道具を返すと、私はトテトテと小走りに会場を後にした。
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