オープニング

其の男は、東京タワーの鉄骨から都市を一望していた。

「東京か……美しい街だ」

 深更にも関わらず灯あかりの絶えない都市に対してではない。二〇ⅩⅩ年の時点で一千四百万人を超えたその灯いのちを……男はどこか憂いているようだった。

「ここが私の終着の地となるのか……それとも……」

 憂いていたはずの男の表情は──ひどく歪な笑みを零して、踵を翻した。

 男の姿はもう影すら残ってはいない。残ったものといえば、静寂──嵐の前の静けさ、というものである。




 とある少年たちはテストに備えていたし、とある少女も猫の夢をみていた。とある女性も電話で友人の愚痴を聞いていた。

 彼らは、人ならざる存在でありながら、日常と非日常を行き来するもの──オーヴァード。とりわけ異能者に変えるものレネゲイドの存在を秘匿する機関ユニバーサルガーディアンズネットワークUGNの側として戦いにあけくれる彼らの居場所は、日常なのか非日常なのかすらわからない。

 そう、いま悪意が迫っているこの瞬間さえ、まだ知らぬ彼らにとっては安らぎなのである。


 扨。最高潮の話を語ろうか。



昨日と同じ今日。

今日と同じ明日。

変わらないように見える世界と日常。

しかし、その裏側で静かに、だが確かにその[日常]は壊れようとしていた……。


ダブルクロス The 3rd Edition 「IMPERIAL」


ダブルクロス……それは裏切りを意味する言葉。





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