千の孤独~ガチ百合物語~
霜花 桔梗
第1話 再会
地方の城下町である、沢藤市。わたしが生まれた街である。母親の死をきっかけで家出同然の行いをして親戚中をたらい回しにされた。
高校二年生の時に結局、行き着いたのは父親の住む沢藤市であった。それは孤独に例えられた。親戚中をたらい回しにされて引っ越しの連続の為に友達はいなかった。
父親の住む邸宅に荷物をまとめて引っ越しが一段落すると。うとうと、眠りにつく。
その夢は近くの稲荷神社の風景であった。幼い日に何度も訪れて母親の回復を願った。そんなある日の事である。
リーン
何処からか鈴の音が聞こえる。母親の火葬が終わり、涙が枯れて家を抜け出してきた。稲荷神社に着き、賽銭箱を蹴っ飛ばす。。そう、父親は今日も仕事で東京に出張中である。
憎しみなど無い。ただ、無力であった。やがて、鈴の音色が止まるとわたしに声をかけてきたのは巫女装束の少女である。
彼女はこの神社に伝わる九尾だと言う。わたしは祈の力で母親の回復が出来なかった事を尋ねる。
「同情はしないよ……でも、君は特別」
冷徹な言葉とは反対に凛と輝く目でわたしを見守っていた。しかし、わたしには無力感だけが支配してしていた。
「今日の君の孤独を忘れさせてあける。その代わり、お嫁に貰って」
「わたしは女の子だよ」
「関係ないわ、大切なのは気持ちよ」
その約束をしてわたしは家に帰る事にした。そして、母親の葬儀が終わると家出の準備をしていた。取りあえず、近場の親戚の家に転がり込むしかなかった。たらい回しにされるのは自覚していたが。仕方がない。しかし、時代はひきこもる事を推奨していた。きっと、父親への不満で家出など同年代の人達には理解されないかもしれない。一昔前ならバイクで走りだすのも選択肢の一つであっただろう。
良いんだ、良いんだ。
リーン
目が覚めると、その夢が過去の現実なのか分からなく戸惑う。わたしはその神社に向かうことにした。見覚えのある風景は幼き日に何度も足を運んだ覚えがある。社の前に立つと、ブレザー制服姿の少女と出会った。そのブレザー制服は明日から通う沢藤学園のものである。
少女は九尾だと名乗り。抱きついてくる。
「やっと会えた」
「マジでガチ百合?」
「問題が有って?」
わたしは断る事ができないでいた。孤独と引き換えに九尾のお嫁さんを貰う。
決して悪い提案ではなかった。そのまま少女は自宅に着いてくるのであった。そして、父親に紹介すると。
彼女は『新宮 つばき』と名乗る。
「このつばきと一緒に暮らしたいの」
「ここで暮らすのだな、問題ない」
と、言って父親は無関心の様にわたしの願いを簡単に聞き入れて書斎に戻る。
こうしてつばきとの同棲生活が始まったのだ。
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