それでも僕は僕の道を行く

青海啓輔

第1話 ほんの些細なことだけど 

 列車に乗ろうとしたら、次の列車は15分先だった。

 首都圏に住んでいれば、そんなことはあまり無いのだろうけど、札幌のJRではよくある。

 駅前には何も無いので、僕はベンチに座って、ぼうっとしていた。

 僕はその後、仕事に戻らなければならず、軽い憂鬱を抱えていた。

 そんな時、二、三歳くらいの子供を連れたお母さんが前を通った。

 するとその小さい子供と目が合った。

 その子は、そのままお母さんに連れられて通り過ぎようとしたが、何を思ったか、お母さんの手を離し、少し後ろに下がってきた。

 どうするのかと見ていたら、急に僕に向かってバイバイと手を振ってくれた。

 僕はちょっと驚いたが、嬉しくなって手を振り返した。

 するとその子が寄ってきて、パーでタッチを求めてきた。

 とても小さな手だったけど、僕は軽く手を合わせた。

 お母さんは「すみません」と言ったが、僕はちょっと嬉しくなって、「可愛い子ですね。」と言った。

 そのお母さんは

「ありがとうございます。」と言って子供を連れて去っていった。

 ほんの些細な出来事である。

 でも僕は楽しい心持ちになった。

 人の気持ちなんて、ちょっとしたことで楽しくなる。

 そんなことを感じた、11月半ばの日曜日だった。


 

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