「隣の席の美少女をナンパから助けたら、なぜかクラス委員を一緒にやることになった件」~リエナIf~ 異世界を救って帰還したら聖女がついてきたので、同棲して甘々ラブコメしながら面倒をみようと思います。
第89話「飼い猫かお前は。ドラゴンの姫なら姫らしく毅然としてろ」
第89話「飼い猫かお前は。ドラゴンの姫なら姫らしく毅然としてろ」
「勇者様、とりあえず今日のところは一緒に寝るということでどうでしょうか?」
「ええっと、リエナ?」
「愛を教えると約束したのは事実ですし、このままだと堂々巡りですよ? もうだいぶんいい時間ですし」
時計を見ると、いつの間にか日が変わろうとしていた。
「やはりリエナ殿は話が分かるのぅ。
「あはは……」
ドラグレリアは俺ではなくリエナに狙いを定めたのか、ベッドに上がると、俺ではなく俺の隣で可愛く女の子座りをしていたリエナに近づいて、甘えるように頬をすりすりし始めた。
「飼い猫かお前は。ドラゴンの姫なら姫らしくもっと
しかしドラグレリアは俺の言葉を右から左に聞き流すと、ギュッと抱き着いてさらにリエナに甘え始めた。
「まぁまぁ勇者様。たまにはこういうのもいいんじゃないですか?」
リエナは柔らかく微笑むと、甘えてくるドラグレリアの頭を優しく撫で始める。
髪をすくように撫でられて、
「むふ、むふ……」
ドラグレリアが気持ちよさそうに目を細めた。
こうやってみると年の近い姉妹か、仲のいい
もちろんリエナが姉でドラグレリアが妹な。
決して逆ではない。
っていうか今さら気付いたけど、こいつの髪ってすごくサラサラだな。
さすがドラゴンの姫だ|(関係ない)。
「でもなぁ」
なおも渋る俺だったんだけど、
「一緒に寝るだけなら問題はないと思いますよ?」
リエナに小さく苦笑しながらそう言われてしまい。
「はぁ……まぁいっか。じゃあ電気を消すな。ほらドラグレリア、こっちこい」
なんかもういろいろと面倒くさくなってしまって、電気を消すと右手でリエナを、左手でドラグレリアを抱きながらベッドに横になった。
両隣から女の子の柔らかい感触と、優しい温もりが伝わってくる。
「勇者殿にギュっとされると気持ちいいのじゃ。戦ってもおらぬのに幸せな気持ちになってくるのじゃ」
「そうなんですよドラグレリアさん。このぬくもりこそが愛なんです」
「な、なんと! これが!!」
俺を間に挟んで、リエナによるドラグレリアへの愛のお勉強会が始まった。
「身体のぬくもりだけでなく、心がぽかぽかしてくること。これが愛の第一歩目にして最終到達点なんです」
「ほぅほぅ!」
「つまり愛とは、ただ一緒にいるだけで幸せを感じることと言い換えても良いでしょう」
「ふぅむ……!」
「今のこの気持ちを忘れないで下さいね。愛の信徒になった瞬間を」
「うむ、この気持ちは未来永劫しっかりと心に刻んでおくのじゃ」
「これから先、愛を感じられずに悲しくなったり、やきもきしたりすることがあるかもしれません」
「むむっ!? 愛とは絶対的なものではないのかの?」
「愛とはそれぞれの心の中にある、形を持たない不確かなものですから」
「むぅ、なるほど」
「ですがそういう時は一度、今のこの気持ちに立ち戻ってみてください。そうすれば失ったと思っていた愛が、心の中にまだ残っていたことにきっと気付くはずですから」
「ううむ、実に奥深いのじゃ。
リエナの説話を、ドラグレリアがそれはもう興味深そうに聞いていた。
やれやれ。
いきなりドラグレリアに夜討ちされた時にはどうなることかと思ったけど、リエナのやつ、完全にドラグレリアを手懐けたみたいだな。
さすがリエナ。
女神アテナイ教団で史上初、10代の若さで高位神官になったのは伊達じゃない。
「では愛を忘れることがないように、もっともっと勇者殿にくっつくのじゃ。ぬふふ……心がポカポカするのじゃ。
話が一区切りついたところで、ドラグレリアが身体をギュッと寄せてきた。
「では私も……えへへ」
さらにはさっきまでの崇高な高位神官の姿はどこへやら、すっかり甘えたがりの女の子になってしまったリエナが、反対側から可愛くくっついてくる。
「さすがに3人だと狭いしな……くっついて寝ないと落ちるよな……」
ドラグレリアをどうするかは明日起きてから考えるとしよう。
俺は2人を両脇に抱えながら、半ば諦めにも似た境地で眠りについたのだった――
(アフターエピソード・完)
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