第35話 もぐもぐタイム、リエナ(1)
ちょっとした正義の社会貢献活動を終えた俺とリエナは、その後は文化祭の飲食系を主に見て回った。
……見て回ったというか、食べて回ったというか。
ちょうどお昼時でお腹もすいてたしな。
「勇者様、『あーん』してくださいな♪」
あれこれ一緒に食べ歩いていると、リエナが可愛らしくおねだりをしてくる。
「こんなに人目が多いところでか?」
今日は天気がいいこともあるのだろう、文化祭を見に来た来校者がかなり多い。
お昼時ということもあって校内も中庭も運動場も、模擬店やイベントスペースは多くの人でごった返していた。
「皆さんお祭り気分なので、多分気にはしませんよ」
「ま、そうだよな。たしかにお祭りで浮かれてるバカップルその1くらいにしか思われないか。じゃあほらリエナ、あーんだ」
俺はさっきクレープ屋で買って食べかけだったバナナクレープを、リエナの口の前に差し出した。
それをリエナがパクっと咥える。
「あーん……むぐむぐ……ん~~! 私のレアチーズクレープも美味しかったですけど、勇者様のバナナも美味しいですね~♪ 勇者様の大きなバナナが口の中で絶妙の存在感を主張してきます♪」
生クリームたっぷりのバナナクレープを頬張りながら、リエナが顔を幸せでいっぱいにした。
既にフランクフルトに焼そば、焼きおにぎり、チョコバナナ、クレープなどなど文化祭を彩る様々な食べ物を食べ歩きしたリエナは、すっかりご満悦の様子だ。
「そりゃよかったな。せっかくだしもう一回どうだ? ほら、あーん」
「あーん♪ ぱくっ♪」
俺の差し出したバナナクレープを再び嬉しそうに頬張るリエナ。
俺のバナナを堪能するようにもぐもぐしたリエナは、食べ終えた後に唇についた白濁したクリームを、ちょっとお行儀悪く舌でぺろっと舐めとった。
「食べ歩きするリエナは本当に楽しそうだよな。あれもこれもパクパク平らげるから、おかげで見ているこっちまで楽しくなってくるよ」
「えへへ、ついいっぱい食べちゃいました……」
少し恥ずかしそうにはにかむリエナ。
「リエナは朝からずっとウェイトレスとして働き詰めだったもんな。そりゃお腹も減るよな」
食べ歩きでかなりの量を胃袋に詰め込んだリエナだったけど、これは別にリエナが大食いというわけでは決してない。
一生懸命に働いたらお腹が減る、極めて当然の自然の摂理だ。
まぁ俺は別に女の子が大食いだからって、どうこうは思わないんだけど。
むしろ食が細い女の子を見ると、食べなくて大丈夫か心配になるくらいだし。
たまにめちゃくちゃ小さいお弁当の女の子が時々いるけどさ?
よくあんな少ない量で足りるなって逆に思ってしまうくらいで。
しかもそういう子に限って『朝ごはんはバナナ1本だけだったんだ~』とか言ってたりするんだよな。
さすがに燃費効率が良すぎないか?
もし俺の朝ごはんがバナナ1本だけだったとしたら、朝の予鈴が鳴るより早く、先に腹が鳴っている自信があるぞ。
それはさておき。
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