第25話 帰還勇者&リエナ、魔王カナンに圧勝する。(2)

「いくぞ、これで終わりだ。リエナ、全力の防御結界で自分の身を守ってくれ」


「はっ! あの技を使うんですね! 分かりました! いと尊き女神アテナイよ、御身を守護する破邪の聖盾を我が手に授けたまえ! 絶対防御結界『セイクリッド・イージス』!」


 強大な聖なる力で作り上げた白銀の防御結界が、リエナの周囲に形成される。


 その発動を背中に感じながら、


「世界を浄化する聖光の業火よ、邪悪なる者どもを打ち滅ぼせ! 破邪顕正は我にあり! 聖光極限開放! 『セイクリッド・バーニング・バースト・ビッグバン』!!」


 俺は極限まで高めた聖なる力を全周囲に向かって撃ち放った。


 『セイクリッド・バーニング・バースト・ビッグバン』。

 周囲一帯を聖なる光で焼き尽くす、俺の持つ最大火力の範囲攻撃スキルだ。


 その圧倒的な火力は、さっき使った迎撃スキル『セイクリッド・カウンター・フルバースト』とは段違いに強烈だ。


 そして俺の放った邪悪を打ち払う聖なる光は、魔王カナンの魂の本体である位相次元空間中に広がると、その全てを聖なる白銀の輝きによって焼き尽くしていく――!


 眩しい程の白銀の光が全て収まった時。

 そこはもう位相次元空間ではなく、元の緑化公園の中だった。


「今度こそ魔王カナンを完全に討滅したな」

 俺はふぅと息を吐くと肩の力を抜いた。


「お見事でした勇者様。それと守っていただきありがとうございました」


「なーに、いいってことよ。それに久しぶりにリエナと一緒に戦って、少し懐かしかったしな」


「私もです。ですが日本での平和な生活に慣れていくうちに、どうやら戦いの勘が少し鈍ってしまっていたようですね。敵の初撃に対して、完全に反応が遅れてしまいました」


 真面目な顔で反省しきりのリエナだったんだけど、


「『オーフェルマウス』から魔王カナンが来るなんて事件はさすがにもうないだろうから、このまま慣れてくれていいと思うぞ? ほんと平和な国だからさ、日本は」


 これが俺の正直な気持ちだったりする。


「それでは日本の平和に慣れつつ、即座に反応できるようにがんばります」


「まぁうん、それでいいんじゃないか?」

「ではそういうことで」


 ま、せっかく久しぶりに2人で協力して戦って懐かしい気持ちになってるのに、ちょっとした考え方の違いでその気持ちを台無しにするのはなんだよな。


「じゃあ家に連絡入れてから帰るとするか。かなり遅くなっちまったから早く帰らないと母さんが心配するよ――主にリエナをな。っていうかリエナに対してちょっと過保護すぎないかうちの母さん?」


「ふふっ、お義母かあさまには本当によくしてもらっておりますので。この先もお義母かあさまとは仲良くやっていけそうです」


「ま、俺としても2人の仲が悪いよりは仲が良い方がいいよ」

「ですよね♪」


「どうした? やけに嬉しそうだな?」

「なんでもありませ~ん♪」


 こうして。

 この世界に転移してきた魔王カナンを今度こそ完全討滅した俺たちは、平和を取り戻した世界で仲良く家路についたのだった。

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