第19話 智哉の極秘ミッション(1)
その日。
俺はとある極秘ミッションの完遂を見届けるために、リエナと一緒にクラスメイトで、特に仲のいい友人である智哉の家に遊びに行っていた。
「ど、どうかな? 一応はこれで完成かなって思ってるんだけど……」
情報を外部に絶対に漏らさないようにするため、まだお昼過ぎだというのにカーテンを閉め切った智哉の部屋で。
清楚な乙女が意中の先輩に新しい髪形の感想を勇気を出して尋ねるような雰囲気で、おずおずと智哉が尋ねてきた。
しかしそれを見て、
「智哉さんすごいです……!」
リエナは胸の前で両手の平を合わせながら大きく目を見開いて、
「ああ……すごいの一言だ……それ以外の言葉が出てこないよ……はぁ、なんて完成度なんだろう……すごい、すごすぎるぞ智哉……まるでアニメの中に入り込んだみたいだ……」
俺も感嘆のため息をつかずにはいられなかった。
智哉は顔をマスクで覆っているため、こちらから智哉の表情をうかがい知ることはできない。
しかし不安そうな声色を隠し切れないでいる智哉に、リエナと俺は掛け値なしの称賛の言葉を送ったのだった。
「これならいけそうかな……?」
「いけるもなにも、文化祭は間違いなく智哉、お前の特設ステージになるよ。高校の文化祭のレベルを完全に逸脱してる。もはやプロの領域だ」
「私もそう思います……!」
「そ、そうか? でもでも
だけど智哉は陰キャらしく、褒められてもなかなかすぐには納得しようとしない。
陰キャの自分に気を遣って褒めてくれてるんじゃないかな、って思っているようだった。
「忖度なんてするもんかよ。まるで本当に戦場で赤い彗星に遭遇したみたいだ。なぁリエナ?」
「はい、これは本当に素晴らしい装備です。私はそのアニメを見たことはありませんが、細部にまでこだわって作ってあるのが見た瞬間に分かりますから」
「だよな。リエナもそう思うよな。俺も、間違いなく智哉は芸術系の才能があると思うぞ? しかもそれだけじゃなくて、最後まで手を抜かずに作り続ける強い気持ちまで持ってるんだから」
「どちらも智哉さんの素晴らしい才能だと思います」
「あ、うん……」
俺とリエナから褒めに褒められて――相変わらずこちらから顔は見えないものの――智哉が少し照れたような素振りを見せる。
「しかもだぞ? これほとんど全部が、折りたたんで簡単に持ち運べるように設計してあるんだろ? なんだよそれ、お前天才かよ?」
「実際に使う時のことまで考えて設計してあるだなんて驚きです」
そんな、俺とリエナの褒め褒めサンドイッチによって、
「やっぱそうか! 実は俺も内心では会心の出来だと思ってたんだよな!」
ついに智哉が喜びの声を上げた。
とまぁそんな感じで、俺たちが今日いったい何の品評会をしていたかというと、
「完成度高すぎだろこのシャ〇専用〇ク。特に頭部のディティールの作り込みのすごさはヤバいってもんじゃないぞ? マジで智哉は天才じゃないか?」
智哉が文化祭用に制作した、段ボールで作ったロボットのコスプレだった。
世界で一番有名なロボットアニメの、仮面をつけた彗星のように速いライバルキャラが乗る、赤い専用機だ。
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