第123話 興味
「ちょっと! 何やってんだよ……」
「作也くんもしたことないんだよね?」
大きく胸の谷間を露出させた彼女はボタンを外すのを辞めない。
張りのある大きな胸がボタンを外したパジャマの間から覗く。あと少しでいけないところが見えそうだ、仁科坂がパジャマの上着を脱ごうとした時、俺は慌てて彼女の両手首を掴んでベッドに押し倒した。
「ダメだ仁科坂っ! そんな事しないでくれ!」
目を見開いた仁科坂は濡れた瞳で俺を見ている。押し倒した勢いで髪の毛が乱れ、パジャマがはだけた彼女に自制心が保てたのは奇跡だ。
「お、俺だって男だからエッチなことには興味あるし、仁科坂みたいな可愛い胸の大きい子としたいと思ってる! だけど……興味本位や勢いでやるもんじゃないだろ?」
「…………意気地なし」
彼女はソバカス顔を横に向け、伏し目がちに呟いた。
「私は作也くんとしたいくらい好きだけど、作也くんはそうじゃ無いってことか……」
「わからないよ……だけどお互いがマックスで好きな状態じゃないとしたらダメな気がするんだ……」
「そっか……」
仁科坂の手首から手を離し、体を起こすと彼女の大きな胸が全開で露出していて俺は慌てて目を逸らした、寝てるのに大きくて綺麗で……多分触っても彼女は怒らないだろう。
「結局見られちゃった」
仁科坂ははだけたパジャマを直し、俺の真っ赤な顔を見てクスクス笑った。
「作也くんが悪いんだからね? 私の髪を拭いてくれた時、完全に恋に落ちちゃったんだから。だ、だから責任取ってほしかったのに……」
「ご、ごめん……」
仁科坂はまた俺に背を向けて布団に寝転んだ。
「わ、私、もう寝るから! なんか恥ずかしいし……」
照明の白いリモコンを手に取った彼女は明かりを消して、常夜灯にすると枕に頭を沈めた。
仁科坂……男子にあんなエッチ未遂しといて寝るとかどんな拷問だよ……。
俺は悶々としながらベッドに横になった、頼むぞ仁科坂、大人しく寝てくれ。これ以上俺にちょっかい出されたら止まんなくなりそうだから。
「作也くん……私に幻滅したでしょ?」
背中向きの仁科坂がポツリと言った。
「そんなことないよ、逆に幻滅したろ?」
「作也くんは優しいからしなかったんだよね? 本気になれないってことは、遊びになっちゃうから……」
遊び……? 実際仁科坂ほどの女の子からのお誘いに乗らなかったなんて他の男子に言ったらお前はバガだって言われるだろうし、俺も言うと思う。一線を超えたら後戻りは出来ない、もし彼女としていたら今後も何度もして……心が交わっていないのに体が交わるのはどうかしてる。
「仁科坂?」
背中でスースーと寝息が聴こえてきた。
えっ? 早っ! あんな興奮するような事があったのにもう寝たのか? こっちはまだ心拍数が高いままだぞ。
俺は一人、ベッドの上で笑ってしまった。今日は仁科坂にしてやられた……いいように惑わされて死ぬほどドキドキさせらせて……可愛かったよな……。
びっくりさせられたお返しだ、俺は振り返って彼女の可愛い寝顔を暫く眺めさせて貰った。
「さ、作也くん? お、起きて?」
あ? 母さんか? 待って……もうちょっと……。
甘い匂いと柔らかさ……懐かしい感触……。
「あっ……んっ!」
お母さんの体がビクンと動き、俺は瞼を開けた。
目の前には見覚えのある仁科坂のパジャマの胸元。上から二つ目のボタンまで外れ胸の谷間に顔を埋めている俺……? はっ? なにこれ? 両手は彼女の大きな胸を掴んでいる。
「うわああああっ! ゴメンっ!」
飛び起きて距離を取った俺は後ろに手を付こうとしてそこが空中だった事に気付いた。
彼女の胸を鷲掴みにした制裁は速攻下された、ベッドの下に落ちた俺は近くの家具に頭を強打し床にうずくまる。
「痛ってーぇ!」
頭を擦る俺をベッドの上から覗き込む驚いた顔の仁科坂、片目を開けた俺に飛び込む豊満な胸の谷間。
「ちょっと大丈夫⁉」
「仁科坂! 胸っ、胸っ!」
「えっ?」
彼女は自分のはだけたパジャマの胸元を確認すると片手で胸の谷間が見えないように隠した。
「藍沢くんのエッチ! 寝ぼけたふりしておっぱい揉んだでしょ?」
床から身を起こし、俺はブンブン腕を振り回して必死に疑惑を否定する。
「違っ! 俺、マジで夢見てて、その……母さんかと思って……。ホントごめん」
「お母さん? そんな甘えん坊なの? 藍沢くんって……もしかしてマザコン⁉」
「そんな事は……いや……どうだろ? 俺って子供の頃母親亡くしてて…………それからよく母さんの夢を見るようになったんだ……」
「えっ? そうだったんだ……。ごめんなさい、変なこと言って……」
「気にしてないよ。仁科坂こそ俺に呆れたよな? きのう君とエッチしないって言ったばっかりなのにこんな事して……」
「藍沢くんが周りの女の子全員と仲良くしたいのって、お母さんが原因なのかな?」
「そうかもな、俺の女の子への感情は歪んでるのかも知れない……」
朝ごはんまで頂いた俺は豪邸の門の前に見送りにきた仁科坂に別れを告げる。
俺の手には皿に乗せられた昨日の残り物のオカズと手作りのケーキ。お皿を借りたって事はまたここに俺は来るのだろう。
歩きだした俺に背中から声が掛かる、振り向くと彼女は大きな声で俺に思いを告げた。
「作也くん! 私が君を好きな気持ちは変わらないからっ! 昨日は楽しかった、私に初めてをいっぱいくれてありがとう!」
「仁科坂! 俺も楽しかった、また遊びに来てもいいか?」
「もちろんだよ!」
彼女はニッコリと俺に微笑み、頬をピンクに染めて手を振った。
俺はまた歩き出し、後ろ手に手を振って彼女と別れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます