俺たちの人生、好きにさせろ!
マキシム
第1話
ここはとある城下の下町、皆が寝静まった頃、馬に乗った1人の男がキョロキョロした後は・・・・
「日本の首都はどこ。」
「東京!」
声をした方へ振り向くと、物陰から1人の女性が現れた
「誰にもつけられてないな。」
「えぇ。」
「それじゃあ行こうか。」
「はい!」
女性を馬に乗せ、そのまま城下を駆け抜けた。この二人の男女が、1人はこの国の第一王子であるイアン・フェスタリア、もう1人は第二王子ユーリー・フェスタリアである婚約者である公爵令嬢のアリッサ・インスバル、実はこの二人は国を捨てて、隣国へと逃避行を企てていたのである。何故、逃避行を企てたのかというと、話は遡る
「窮屈だわ。」
フェスタリア王国第一王子として生を受けたイアン・フェスタリア、母親(故人)は側室の子だったため、王位継承権は得られず、ずっと日陰の暮らしをしてきたが後悔していなかった
「王太子になったら、これ以上の窮屈がないわ、あぁ、日本にいた頃が懐かしい。」
そうこの男は転生者であり、欲しかった漫画を手に入れウキウキしていたところ、高齢者運転による事故でこの世とおさらばしたのだ。次に目覚めた時には西洋式のとある一室にいた、もしかして流行りの異世界転生か!
「もしかして異世界転生、いつ!」
突然、頭痛が襲った。頭痛を我慢しつつ、ふと鏡を向くとそこには銀髪碧眼で色白の美少年、何故か頭に包帯が巻かれた状態で写っていた
「もしかして俺か?」
自分の顔をペタペタした後、包帯の巻いた所を触ると若干痛みが走った。すると扉からノック音がして、振り向いた
「だ、誰だ。」
扉が開くと1人のメイドが駆け寄ってきた
「イアン王子、お目覚めに・・・・」
「どちら様?」
俺は不意にそう聞くとメイドは驚いた表情をした後・・・・
「先生!先生!」
メイドがそう叫んだ後に部屋を退出した。俺は何がなんだか分からず、途方に暮れた。その後、メイドに呼ばれた医者による診断が始まった。俺はこの世界を知らないので、記憶喪失のふりをした
「これは一種の記憶障害ですね。」
「そうか。」
医者の隣で無表情で俯くこの男はどうやら、この国のフェスタリア王国の国王であり、このイアンの父であるカイサル・フェスタリア、何があったのか話を聞くと、どうやら俺は古くなった木の枝に頭をぶつけて、そのまま倒れたらしい。ちなみに俺はこの国の第一王子で母は既にこの世にいないらしい
「まぁ、王子に生まれ変わったなら、それでもいいか。」
後で知ったがイアン・フェスタリアは第一王子だが側室の子のため王位継承権がないらしい。王太子は4歳下の第二王子であるユーリー・フェスタリアが継ぐそうだ
「まぁ、好き勝手にやるか。」
正直言って王宮の暮らしは窮屈そのものであり、一からマナーやら歴史やら、王子教育を受けなければいけないらしく、俺は慣れない事をやった後、ベッドに寝転んだ
「はぁ~、疲れた。」
一応、父である国王の紹介で、俺の異母弟のユーリー・フェスタリアに会った。見た目は金髪碧眼で色白の美少年だが、実に小生意気なガキで俺の方には顔を向けず、一応来てやったみたいな雰囲気を感じた。父である国王に注意され、やっと俺の方を向いたくらいだ。こんなのが王太子とは世も末だな
「よし、この国を出よう。」
俺はこのクソガキの臣下なんか真っ平御免と思い、平民の暮らしを知ろうと躍起になった。時にはお忍びで城下を見て回ったりもした
「やっぱ、俺は王子よりも平民の方が性に合ってんな。」
それから歳月が経ち、ユーリーに婚約者が現れた。この国に仕える公爵家であるインスバル家の令嬢であり、ユーリーと同い年のアリッサ・インスバルである。見た目は赤茶色のロングヘアー、金色の瞳、色白で美少女だが気の強そうな顔立ちをしていた。ちなみに俺にも婚約者を父が宛がおうとしたが、俺は拒否した。一生、独身を貫くと宣言した、正直言うと女は大好きだが、王子でいる間は独身でいようと決めた。父はそれ以上、何も言わず俺の婚約話は無くなった
「どんだけ、関心がねえんだよ。」
立場上、ユーリーの婚約者であるアリッサと話す機会があり、いろいろと話し会うと・・・・
「あぁ~、日本が恋しいですわ。」
「えっ。」
俺はすかさず、日本の事を聞くと、アリッサは書物で見たと誤魔化していたが、俺は怪しみ、従者たちを下がらせた後、俺は・・・・
「日本の首都は東京。」
俺はそう言うとアリッサは驚いた顔で俺を注視した
「殿下、もしかして転生者!」
「やはりそうか。」
俺は今までの経緯を話すと、アリッサも自分の経緯を話した。どうやらここは恋愛小説の世界でアリッサはヒロインである元平民の男爵令嬢のマリア・スカーレットを苛める悪役令嬢という立場らしく、最期は王子たちによって処刑されたらしい。更にインスバル公爵家は男尊女卑の家系らしく、父である公爵と弟の公爵子息とは不仲である
「アリッサも苦労してんだな。」
「私だって悪役令嬢に生まれ変わりたくなかったわよ。どうにか死亡フラグを回避したいのよ!」
どうやらこの世界のユーリーは、女遊びが大好きで常に他の令嬢と浮気しており、悪役令嬢であるアリッサに対しては物をプレゼントして誤魔化す最低なゲス野郎に成り下がっているとのこと。今はヒロインである男爵令嬢であるマリアにのめりこんでいるとのこと・・・・
「あぁ、思い出した。」
「どうしたの?」
「実はな・・・・」
実は俺にはやっと出来た彼女がいたが、イケメンに寝取られた挙げ句、ストーカー野郎と断罪されて一時期、引きこもりになったことがある。それを聞いた途端、アリッサに俺に同情した
「苦労したんだね。」
「いいよ、昔の事だから・・・・」
俺は昔の苦い記憶を振り払い、アリッサに婚約解消を進めることにした
「それならユーリーと婚約解消すればいいんじゃないのか。公爵にもこの事を報告して・・・・」
「無理よ、公爵は婚約解消を絶対に取り消さないわ!」
アリッサ曰く、父である公爵は男尊女卑思考だけではなく、野心もあり、外戚となって政治の実権を虎視眈々と狙っており、娘を駒としか扱っていないのだ。それを聞いた俺は、アリッサにある提案を持ちかけた
「なぁ、この国を出ないか。」
「えっ。」
「どうせここにいても処刑されるんだ、だったら一緒にこの国を出よう。」
「あてはあるの?」
「あぁ、隣国のバイサル帝国だ、あそこはこの国よりも強大ではるかに文化が進んだ国だ。」
バイサル帝国、そこはフェスタリア王国よりも強大な軍事力と優れた文化と工業力を持っている。隠れるにうってつけの場所である。それを聞いたアリッサは・・・・
「絶対に行く!連れてって!」
「よし分かった!」
そして現在に至る。俺とアリッサはこの国が開発した無限収納鞄に貴重品や着替えや食糧等を入れた。馬もこの国で一二を数えるほどの駿馬を用意したので、一気に国境まで到着した
「アリッサ、通行証を持ったか。」
「ええ。」
俺は密かに偽の通行証を作らせた。城下のお忍びのために作ったものであり、名目は下々の暮らしを勉強するためだと、アリッサにも偽名付きの通行証を作らせたのである。俺たちは国境の兵士に通行証を見せると兵士は・・・・
「よし通っていいぞ。」
「「ありがとうございます。」」
俺たちは無事に国境を出て、すぐに隣国であるバイサル帝国へと向かった
「ようやく脱出できたな。」
「私たちの第2の人生はここからよ!」
その頃、フェスタリア王国では、第1王子であるイアン・フェスタリアと、第2王子の婚約者であるアリッサ・インスバルが失踪した事が知れ渡ったのである
「あの馬鹿娘が!」
「父上、陛下には何と言って誤魔化すのですか!」
「とことんあの馬鹿娘のせいにする他はない!」
アリッサの突然の失踪に激怒したインスバル公爵とアリッサの弟のヴィラン・インスバルは絶縁をすると共に、この状況を打開するか考えていた
「イアンとアリッサがいなくなっただと?」
「はっ!」
異母兄と婚約者が姿を消した事を知ったユーリーは最初は何とも思わなかった。側室の子であるイアンを兄とは思わず、政略結婚で結ばれたアリッサは放ったらかしの状態でいたのである。それからユーリーは父に呼ばれ、参内した。そこには父である国王カイサルと母である王妃のラウラが玉座に座っていた
「父上、母上、ご機嫌麗しゅう。」
「ユーリー、二人の失踪を聞いておるな。」
「はい、それが何か?」
ユーリーの我関せずな態度に母であるラウラが目くじらを立てた
「ユーリー、貴方はなんでそう悠長にしているの!アリッサ嬢は貴方の婚約者なのよ、それをイアンに奪われて平気なの!」
「え。」
「ユーリーよ、イアンとアリッサ嬢が予てから親密な間柄であったという噂を、お前は知らぬのか。」
「な、なんですって。」
ユーリーは耳を疑った。イアンとアリッサが親密な間柄・・・・
「父上!どういう事ですか!」
「そのままの意味だ、お前が他の女に現を抜かしている最中に、イアンはアリッサ嬢とただならぬ関係を築いておったと侍女たちが目撃している。先程、国境にて二人が偽名を使ってこの国を脱出したと知らせが届いた。後で気付いたがもう手遅れだったらしい。」
まさかイアンとアリッサがただならぬ関係と聞いたユーリーはショックを受けると共に二人への怒りと憎しみの感情を抱いた。傍から見れば逆切れともいうが、もはやそれは関係ない
「父上!すぐに二人を連れ戻しましょう!不貞の罪であの二人を処刑するのです!」
「無駄だ。」
「なぜですか!」
そこへ王妃がわけが分からない息子を叱りつけた
「まだ分からないのですか、二人が国外を出た時点で、追手を差し向けても無意味なのですよ!それもこれも貴方が女遊びに夢中でアリッサ嬢をほったらかしにしたのが原因でしょう!」
「だ、だったら他国に協力を願えば・・・・」
「他国に我が国の恥を晒すどころか、機密情報を流出させる気か。」
「し、しかし。」
「イアン・フェスタリアとアリッサ・インスバルの両名は病死とし、王籍及び貴族籍から除籍いたす。」
父の口からイアンとアリッサは病死扱いにした。病死ともなれば、二人はただの平民として生きていかなくてはならなくなる。カイサルが考え抜いた上での判断である
「全てはお前の不手際による失態だ。」
「そうです、みんなユーリーの大失態ですわ!」
父からは失望の目を向けられ、母にこっぴどく叱られた。ユーリーのプライドはズタボロになり、いつしか二人に復讐しようと考えるようになった
「(許せない、僕を屈辱を与えた二人がユルセナイ!)」
「陛下、インスバル公爵がお見えになりました。」
「通せ。」
そこへアリッサの父であるインスバル公爵が参内した。公爵は国王と王妃の前で娘の不始末を謝罪した
「此度は娘の不始末、誠に申し訳ありませぬ!」
「わざわざその事を申しに来たのか?」
「はっ!もはやあれは娘とは思いませぬ。即刻、勘当いたしました!」
「ほお~、それで貴様はどうするのだ?」
「・・・・どうするとは?」
「娘を勘当させるだけでは済まないだろう。その親である貴様はどう責任を取るのだと聞いておるのだ。」
国王からそう問い詰められたインスバル公爵の表情は青白くなり、脂汗をかきだした。その様子を見た国王は溜め息をつきつつ、国王はインスバル公爵に宣告をした
「インスバル公爵、娘の失踪は貴様の職務怠慢である。よって爵位を剥奪の上、平民に降格いたす!」
「へ、陛下!」
「連れていけ!」
「陛下!お許しください!陛下!」
インスバル元公爵は衛兵によって連れていかれた。すると今度はユーリーに顔を向けた。ユーリーは緊張しつつも目を背けず、父と顔を注視した
「お前には新しい婚約者を見つけねばならぬな。」
「あ、あの父上、私には心に決めた女性がいます!」
「誰だ?」
「マリア・スカーレットです。」
「スカーレット・・・あぁ、男爵家か、ダメだ。」
「何故ですか!」
「男爵家では貴族たちが納得しない。精々、側妃くらいだ。」
「それくらい愛があれば・・・・」
「ダメだ。」
父からは頑として想い人のマリアを婚約者とは認めなかった。母からは呆れた目で自分を見ており、次の婚約者は母が気に入った相手を上級貴族の令嬢を見つけるとのこと・・・・
「(くそ、全てはイアンとアリッサのせいだ。)」
異母兄であるイアンと元婚約者であるアリッサに再び復讐の炎をメラメラと燃やし続けた。その様子を玉座で眺めていた国王はある事を考えた
「そんなにその令嬢を婚約者にしたいのなら、考えてやらんでもない。」
「えっ。」
「へ、陛下!何を仰るのですか!」
「まぁ、聞け。そなたの想い人に妃教育をさせ、もし見込みがあれば婚約者として認める。」
「本当ですか!」
「ただし、そなたの持つ騎士団を私の預かりとし、イアン及びアリッサに追手を放つことを禁ずる。」
父の口から自分の騎士団の没収とイアンとアリッサに追手を放つことを禁じた。ユーリーは不満に思いつつも、想い人が婚約者になり、やがて自分が国王、マリアが王妃になれば、すぐにイアンとアリッサに追手を放つことをできると考えて、その案を了承した
「父上に従います。」
「ユーリーよ。」
「はっ!」
「私をあまり失望させるな。」
「はっ。」
「下がれ。」
退出したユーリーはそのまま想い人であるマリアに会いに行った
「殿下!」
そこには想い人であるマリアが待っていてくれた。ピンク色のロングヘアーで、愛らしい眼、色白碧眼、他の貴族令嬢にない天衣無縫な人柄に私は惹かれていった
「マリア、王妃になれるチャンスが来たぞ。」
「本当ですか!」
「あぁ、妃教育をこなせば婚約者にすると言ってくれたよ!」
「そうですか!私、頑張っちゃいます!」
「おお、頼んだぞ!」
私とマリアは妃教育さえこなせば幸せになれると思っていた。かつての婚約者であるアリッサにも出来たのだから、マリアにも出来るはずだと思っていたが、現実はそうではなかった
「背筋を伸ばす!そこは違う!欠伸をするな!」
「ヒイイイイ!」
妃教育は予想以上に過酷な物で、マリアは何度も私に泣きついてきたのだ。私は一言文句を言おうと教育係に殴り込んだ
「流石にやりすぎなんじゃないのか?」
「はぁ~。そうせざる負えない原因を作ったのは他ならぬ殿下です。」
「な、何だと!」
「本来、妃教育とは殿下の婚約者に選ばれた時点で時間をかけて行われます。礼儀作法は勿論、妃としての心構え、国の歴史等を一から教えなければいけないのです。それ故、来月に控える王国創業記念パーティーまでには間に合うよう熱を入れております。」
「ぐっ!」
それを聞いて、ユーリーはそれ以上、言葉は出なかった。我が国が主宰する王国創業記念パーティーには我が国の貴族だけではなく他国の王族や貴族も来訪する。もしマリアが何からの失態を犯せば我が国の恥を自国だけでなく他国にも知れ渡るようになる。流石にそれは避けたいと思ったのかユーリーはそれ以上、文句は言えなかった。今日もまたマリアが泣きついてきたが・・・・
「マリア、何とか我慢してくれ、アリッサもこなしてきたんだ!アリッサにも出来るんなら君にも出来る!」
私にとっては他愛のない一言だったが、マリアは信じられないような顔で私を見た後、文句を言っていた
「なんで、なんで殿下は昔の女の名を出すのですか!」
「え。」
「まるで私とアリッサを比べているようではありませんか!」
「いや、そういう訳じゃ・・・・」
「分かったわ、殿下は未だに昔の婚約者に未練があるのよ、出なきゃ、そんなことを言わないわ!そんなんだから婚約者に捨てられたのよ!」
「何?」
その言葉に流石の私もカチンときた。アリッサに捨てられた?それを聞いた瞬間、怒りが立ち込めた
「私は捨てられてはおらぬ!」
「がはっ!で、殿下!」
私は怒りに流され、マリアを押し倒し、そのまま首を絞めていた
「お前に何が分かる!アイツは自分から逃げ出したんだ!決して捨てられたわけではない!」
「く、苦しい・・・・」
「殿下!何をされているのですか!」
「離せ!この女に言わねばならない事が山ほどあるんだ!」
騒ぎを聞きつけた衛兵らによって羽織締めされ、私とマリアは離れ離れになった。その騒ぎはすぐに国王の耳にも届いた
「愚か者め・・・・」
その頃、ユーリーは自室にて見張り付きで軟禁させられていた。少しだけ頭が冷えて冷静になったユーリーは自分のした事に嫌悪感を抱いた
「(私はなんて事をしたんだ、大切なマリアを傷付ける事を・・・・)」
ユーリーは後悔しつつも、父である国王にどう弁解するか考えた。騒ぎは父の耳にも届いている。きっと、お叱りを被るに違いないと考えていると、そこへ騎士が入室した
「殿下、陛下よりの御召しにございます。」
「あぁ。」
騎士たちによって父の下へ連れていかれた。言い訳を考えつつも父の私室に到着してしまった。私も共に入室させられ両親である国王と王妃に対面した
「下がって良い。」
「はっ!」
騎士たちが下がった後、両親は私を見るなり溜め息をついた
「随分とやらかしてくれたようだな。」
「申し訳ございません。」
「ユーリー、お前の想い人は婚約者の座を辞退したそうですよ。」
「えっ!」
母である王妃の口から「マリアが婚約者を辞退する」という言葉が出た時、自分の耳を疑った
「ま、待ってください!それは本当ですか!」
「あぁ、男爵を通じて辞退を申し込んできた。よほど妃教育とお前の暴力が身に答えたのであろうな。」
それを聞いた私は何も言えなかった。一時の感情に流され、マリアに手を上げてしまったのだ、今になって自分の仕出かした事を後悔した
「さて困ったことになった。お前の暴力沙汰が広く知れ渡ったようでな、娘を婚約させる貴族たちが相次いで辞退を表明しおった。」
「えっ!」
「只でさえお前は女遊びに評判は悪いと言うのに、イアンとアリッサ嬢の失踪に続いて、今回の件で更に拍車をかけおったわ。そこで王妃と話し合ったんだが、お前を廃嫡することにした。」
「は、廃嫡!」
「そうだ、お前を廃嫡して第3王子であるライトを王太子に致す。」
それを聞いた瞬間、私は全身から力が抜けた。なんでこんな事になったんだ。私はどこで間違えたんだと自問自答しつつも時既に遅しだった
「衛兵、こやつを下がらせろ。」
「はっ!」
その後、私は衛兵によって連行されるように部屋を退出させられた。その後の私は衛兵に連れられ、自分の部屋へと戻った。その後、私は何故こうなったと自問自答していると、そこへ第3王子である私の弟のライト・フェスタリアが入室してきた
「兄上、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。ライトか?」
「私も先程、留学から帰ってきたばかりなのですが、何があったのですか?」
「ちょっとな。」
私はライトを見た瞬間、心にモヤモヤした感情が芽生えた。こいつさえいなければ、私は再び王太子に、すると私はいつの間にか護身用のナイフを抜いていた
「あ、兄上!」
「キエエエエエエ!」
「うわっ!」
ユーリーは護身用のナイフでライトの額に切りつけた。ライトは突然の兄の凶行に驚愕し、転んでしまった。そこへユーリーはライトの肩に切りつけた
「ぎゃあああ!」
「殿下!お辞めくだされ!」
呆気に取られていた御付きの者が必死に止めようとしたが、ユーリーはそのまま御付きの者を切りつけた。騒ぎを聞きつけた衛兵らによってユーリーは取り抑えられ、ライトと御付きの者はすぐに医務室へと運ばれた
「離せ!アイツさえいなければ私が王太子になっていたんだ!離せ!」
ユーリーが起こした刃傷沙汰はすぐに国王と王妃の耳にも届いた
「何を血迷うた事をしたのだ!あやつは!」
「それよりもライトは無事なの!」
「はっ!浅傷にて命に別状はございません。御付きの者と一緒に医務室にて治療を受けております。」
「そうか・・・・あの大戯けが!」
その後、ユーリーは厳しい取り調べを受けていた
「何故、ライト王子を切りつけた。」
「・・・・アイツさえいなければ私が王太子だったんだ。」
ユーリーはそれのみを口にするだけ、それ以上は何も言わなかった。取り調べの結果はすぐに国王の下に報告した
「ユーリーを絞首刑に処する。」
「ははっ。」
すぐに勅使がユーリーの下に向かい、勅命を報じた
「平民、ユーリーを絞首刑に処する!」
「絞首刑・・・・ちょっと待て!それでは罪人の扱いではないか!」
「もはや弁明は不可能、潔く覚悟されよ。」
「嫌だ!父上を会わせてくれ!頼む!」
「今更、見苦しいぞ!平民の分際で王太子に切り受けるとは言語道断である!」
「父上!父上ええええええ!」
その後、ユーリーは絞首刑に処される直前に舌を噛みきって、自害した。ユーリー・フェスタリアの名は歴史の闇に葬り去られた。一方、マリア・スカーレットは王太子の醜聞も相まって、修道院に入れられたという。マリアはユーリーに関わった事を後悔し、心を入れ換えて、人民救済にその生涯を閉じた
「ユーリーが病死か・・・・アイツ何をやらかしたんだ。」
隣国であるバイサル帝国にたどり着いたイアンとアリッサは港町にてカフェをオープンさせた。前世の記憶を頼りに新メニューを展開し、俺自身、経営の才能があったのか、店は軌道に乗っており、従業員も雇えるほど繁盛している
「貴方、食事をしながら新聞読まないでちょうだい、子供たちが真似するでしょう。」
「ああ、スマンスマン。」
俺はアリッサと結婚し、双子の男女を儲けた。種々と大変ではあるが、自由があって遣り甲斐のある日々を送っている。因みにどこへ聞きつけたのか、帝国の関係者がお忍びでカフェに来ることがある。中には貴族の爵位を与えようとしたが、断ることにした。もう堅苦しい王族・貴族の暮らしは懲り懲りだと・・・・
「「パパ、ママ、遊びに行こう!」」
「ああ、その前に食べ終わってからな。」
「「は~い!」」
今日はカフェの定休日、久し振りに家族団らんで過ごすことができる。俺もアリッサもこの世界に来て家族運には恵まれなかったが、平民になってやっと家族としての生活ができる事に感謝しつつ日々を過ごした。後に俺たちが開いたカフェがやがてバイサル帝国内に支店を各地に儲けるほどの大企業になるのは後の話である
俺たちの人生、好きにさせろ! マキシム @maxim2020
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