破滅への序曲
116 その1 ~その頃の山川王国~
何とか無事?にチューザー共和国の追手を振り切ったザックたち一行。だが、まだその国内な訳で…暫くは油断大敵な状況だ。
そしてその頃…マウンテリバーに残して来たゴーレム娘たちに異変が発生する…どんな異変があったのだろうか…
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- 山と川の王国を襲った異変 -
「ふわぁ~~~…」
あくびを盛大に漏らすマウンテリバーの街の門番。はっきりいって怠惰ではあるが平和の証拠でもあろう…だが。
「がっ…」
不意に矢が突き立つ。だが、それはあくびをした門番ではなく、反対側のゴーレム娘にだ。だが頭部に刺さったくらいではゴーレムは倒れない。仮に目を狙われたとしても視覚を失っただけだ。だが…
「ぐっ!?…ががが…ぁ…」
眉間を穿った矢以外にも、目・耳・首・心臓を撃ちぬいた矢が複数刺さり…遂に片膝を地に付け…
「ぁぅ…」
ばたり…と、とうとう耐え切れずに全身を地に伏すゴーレム娘。この間僅かに5秒と掛かっていない。そして…
ばさぁ…
と、唯の土塊と化す死体。後には人型に盛られた乾いた土が残るのみだ…
「な…」
・
・
『こちらアルファチーム、門を制圧。どうぞ?』
『確認した。プランを続行せよ』
『了解。オーバっ』
そんな魔力通話が交わされるが傍受する魔法も技術も無い今、傍目には黙って歩いているだけにしか思われない。味方と魔力通信を交わした、弓を担いだ冒険者風の人間が数人づつ…マウンテリバーに侵入を開始する…
そして門の中に数10人の冒険者風の人間が侵入した後、門番の死体が人知れず片付けられ…代りの人員が配置される。無論、それは侵入した仮想敵国側の人間である。崩れ落ちたゴーレム娘は予想外だったらしく、暫くすり替わった男性門番だけだったが(似た体格の者を配置し、顔は特殊メイクで似せてある)暫くすると似た背格好の女性が門に立つ…どうやら人的資産は豊富のようだ。
・
・
『冒険者ギルド、クリア』
『商店街、オールクリア』
『平民街、思ったより広いが1時間後にはクリアの予定…現在半分程を消化』
『生産職区画クリア。家畜とか畑なんかは残すのか?』
『あぁ…使える物は残せとの仰せだ。だが、人間は全て抹殺せよ』
『ラジャー』
『貴族街クリア』
『領主区画、少し
『ノースサイド、侵入ができない。どうしますか?』
『そちらはいい。橋を落とすか行き来できなくせよ』
『ラジャー。橋は…物理的に破壊不能とのことなので、封印処置を施す』
『了解した。何、ノースサイドは陸の孤島状態だ。ある程度は自給自足可能らしいが…いずれ限界が来る。放っておいても構わない』
こうして…マウンテリバーは謎の集団に襲撃され…僅か半日で落とされるのだった。
ノースサイドリバーを除くマウンテリバーサイドの人間はほぼ全員が抹殺され、実に5万と6千人余りの人間が老若男女の区別無く、その命を刈り取られたのだった…。殺された全ての人間は殺された事実に気付くこともできずにいたことだけが不幸中の幸いだろうか?…それとも、気付かない内にその生涯を強制的に閉ざされたことが不幸だっただろうか…それは本人にしかわからないだろう。
その中でも感覚が敏感な者は不幸だったかも知れない…。何故なら…見えないが近付いてくる恐怖に侵され…そして気付けば死んでいたのだから…
- ノースリバーサイド -
「何?…マウンテリバーサイドに敵襲?」
皇帝のジェンドゥに報告が入る。だが、外壁が破壊されたという報告はない。
「何かの間違いではないか?」
「いえ、それが…」
話しを聞けば、人知れずどんどんマウンテリバーサイドの人間たちが殺されて生命反応がどんどん消えているとのこと。今や残る反応は半数にも満たないという…そんな繊細な侵略ができるのは知性ある存在。若しくは闇の…
「急ぎ石橋の防衛を強化。こちらに侵入を許すな!」
「はっ!」
ノースリバーサイドに残された屋敷に残された資料に依れば…マウンテリバーサイドは人間が生活を営む為に造られた街であり、魔族からの侵略を防ぐノースリバーサイドを維持する為だけの存在。最悪、ノースリバーサイドだけが残っていればこの地の役割を全うが可能だ。
(だからこそ…何処の誰かはわからないが…ノースリバーは死守せねばならない…)
盟約を護るならば、北の死守は絶対だ。その為には…南は捨てても…
そして、南から眩い光が発せられ…暫くするとその光も消える。
「何があった?」
「今、調べさせています…」
暫く待つが連絡はない。だが、こちらに何の影響も無い所を見ると…攻撃を受けた訳ではないようだ。
「陛下!…原因がわかりました」
「話せ」
調査した結果、件の石橋に通過不可能な術式が掛けられたということがわかった。
「結界か?」
「いえ…封印だと思われます」
結界は一時的に通過ができなくなる一種の障壁だ。物理や魔法など、幾つか種類がある。封印とは中から何物も出て来れなくなるようにと封じる「蓋」だ。当然、人も物も空気でさえ出てこれなくなる。
「まさか…」
ジェンドゥは急ぎノースリバーサイド全域の調査を命じる。そして3時間程の後…驚異的な調査結果が報じられることとなる…それは
「陛下…誠に申し上げ難いのですが…」
「よい、話せ」
「は…」
そして報告内容は「事実なのか?」…と、改めて問うような内容だったという…
◎封印はノースリバーサイド全域に掛けられている
◎生物は勿論、物質や魔力などの行き来もできないし水や空気もその範疇に入っている
◎幸い、光は素通しなので内部の植物がすぐに死滅することはない
◎=汚れた空気を吸い、新鮮な空気を排出する植物がある程度は生き延びるので、中の生物もすぐには窒息する危険は暫くはない
◎但し、水を通さない性質の封印なので何れ植物が枯れてしまう危険がある
◎以上のことから…我々が生存できる期間は…恐らく1個月くらいだろう…
「何が目的なのか?…マウンテリバーが滅べば魔族を防ぐ術を失うというのに…いや、今はゲートが潰されているから今すぐ人類が滅ぶという訳ではないが…まさかっ!?」
だが、その相手の考えがそれで見える訳でもなく。ジェンドゥ皇帝たちの命が失われるまでのカウントダウンは途切れることなく…刻み始めたのだった。
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ザックたちがチューザー共和国の中を東へと進んでいる間、こんな破滅的な展開されているとは…ゴーレム娘たちも気付いたら身体を破壊されている為に念話で伝えられることもなく、気付かなかったのだった…(
備考:
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