106 その7 ~巣穴殲滅作戦 -中編-~

偶々見つけてしまった魔物の巣。そこを探索し、その際に偶々見つけてしまった人間の女性を「見てしまったし、見過ごすのは…」という言い訳でモンスターハウス…否、魔物たちの巣穴から村娘?を救出するべく動き出したザックたち。

予定通り囮部隊を用いて巣の中の大部分の魔物をおびき出し、半数以下になった巣の中を救出部隊で効率よく残存の魔物を狩りながら人間の女性を救い出していった…だが。最後の1人はどうやら人間ではなく、ドワーフらしいと判断するザック。残るはロード、シャーマン、クイーンなどの高位種族ばかりだ。

ロードたちを斃し、最奥の部屋に捕らえられたドワーフ娘を救出しようと突入部隊の中で1,2を争う程のゴーレム娘が突入してすぐバラバラにされてしまった。どうやら待ち受けるクイーンたちは凄腕らしい。そして…従者ゴーレムを破壊されたザックが静かに怒りに震えていた…

━━━━━━━━━━━━━━━


- 最奥の部屋 -


クーNo.009!?」


リリーNo.066!!」


入口のドアから2人のボディがぶっ飛ばされて来て、続けて突入しようとしてたゴーレム娘たちが足を止めて叫ぶ。それは見覚えがある髪色と各々が好きに弄った制服で辛うじて判断できる…それ程までに判別が困難になる程破壊されていたのだ…


〈やれやれ…たかが造り物が偉そうに…〉


中からクイーンとおぼしき魔物が出て来る。そのついでに2人のゴーレム娘の残骸を踏みにじって…


「貴様ぁっ!?」


頭に血が上った1人が動こうとするが…


ぽん


と肩を押さえられ、


「止めるなっ!…クーの、リリーの…「わかっている。だけど、君には荷が重い」…だがっ!…え?」


振り向いた先にはその姿が…と思って視線を下げると、


すとっ


…と、今、床に着地しました然なザックが前を…クイーンオーガを睨んでいた。


「ま、マスター…」


茫然と呟いていると、


(いつの間に…)


(まさか転移を?)


(いやこんな洞窟みたいな所で…)


…と、後ろでヒソヒソ呟きあっているゴーレム娘たち。


「走って来ただけだよ…所で?」


〈なんじゃ、ガキ〉


「僕の可愛い子たちをよくも甚振いたぶってくれたね?」


〈かわいい子な…マガイモノをの…〉


グリグリと足元の残骸を見せつけるように踏み躙ろうとするクイーン。だが、それ以上踏み躙る前に消失するクーとリリーの残骸。


〈む?…まさか〉


だがそれ以上は口にせず。クイーンは


ばっ!


と、瞬時に後退して姿を消す。そして…


「結界」


居場所は既に判明している。結界はドワーフ娘とドアに張り付け、その直後…


どがあああんんんっっ!!


と、炎熱系の攻撃魔法が飛んで来るが…予め張っておいた結界に阻まれ、その場で爆発する。


「「「…!?」」」


ゴーレム娘たちが驚愕して見詰めているが…ザックは無言で右腕を上げて唱える。


「アポート」


すると、


ひゅっ


と空気が動いて右腕の手先に結界に包まれた人物がいきなり現れる。見れば結界の中には最後の救出対象…ドワーフと思しき娘が目をぱちくりと、僅かに頭を左右に振ってびっくりまなこでこちらを見回していた。


ドワーフ…酒を水のように飲み、採掘や鍛冶、細工を生業として生活する手先が器用で背丈が人間の半分程度の筋骨隆々な髭もじゃの山の種族…という見解が世間一般的だ。捕らえられていたのは見た目は髭が無い幼女…といった感じなので成人前のドワーフ女性なのかも知れない。


「結界解除」


但し、最奥の部屋の出入口は解除せずに分厚く破壊不能な岩の壁で塞ぎ、部屋の壁を結界で覆って空気穴も塞いでおく。それ程大きい部屋でもないので1時間もせずに窒息死の最期を迎えるだろうが…苦しんで死ねばいいと、ザックは声に出さずに処刑執行した。



「…巣穴の中を確認して来ました!」


「お疲れさん。残存戦力は?」


「ありません!」


「そうか…」


念の為、洞窟内を探知魔法と魔眼の力で再確認する。目前の最奥の部屋以外には生命反応は無い。また、負の生命力で活動する不死体アンデッドも確認できない。一応、死体は全て焼滅して回って来たので塵の状態で活動可能な特殊個体でも無ければ問題無い筈だ…


「あの…」


結界を解除した後、ゴーレム娘たちに布を掛けて貰ったドワーフ?娘がおずおずと声を掛けてきた。


「あ、あぁ…放置してすまない。僕はザック…君は?」


ちなみに他の村娘と思しき女性たちは既に診療所まで護送して治療しているとのことだ。


「隠れ里…「ドーフォク」の村長の娘、ソァーヌよ…た、助けて貰って感謝しているわ…ありがと」


多少怯えが見えるが礼儀正しく、きちんと感謝の意を伝えて来るドワーフ娘…否、ソァーヌ。見た目は幼女然としているが実年齢は成人しているのかも知れない。ならば…


解析を発動して衣服のサイズを測り…ストレージ内の素材を用いてソァーヌが着用できる衣類を創造する。勿論靴もワンセットだ。但し…下着まで用意するとあらぬ疑いが掛けられるかも知れないので、下の方だけ…ズボンに敏感な部分を覆うような感じで創っておいた。脱ぐと裸になってしまうが無いよりはマシと思って貰おう…


「これを着て貰ってくれ。頼んだ…」


と、ストレージからソァーヌの衣類と靴を出してから手近なゴーレム娘に頼むザック。取り敢えず、既に焼滅殺菌済みの別の部屋で着替えを頼み、残す最後のこの部屋を滅却するザックだった…



「巣穴の中の生存反応無しを確認」


「善し…点火!」


どどぉぉぉ・・・・・ん………


単純な火炎属性の魔導具…というかダイナマイトに似た爆発するだけの爆弾を設置してまわって、外に出てから着火…爆発のコンボで吹っ飛ばした訳だ。幾ら中を綺麗に焼滅させたからといっても洞窟という物理的な構造が残っていたら、いずれは此処を見つけた魔物たちが住み着いて災いを撒き散らすこととなる。ならば構造ごと吹っ飛ばせば住み着くこともない…という訳だ。


「うは…結構でかい爆発だったな…」


「やりすぎでは?」


「いやぁ…跡も残さず吹っ飛ばさないと意味無いし?」


流石に3km程離れていても耳がジンジンと痛む程の規模の爆発だ。恐らくは地下相当の部分までひっくり返したかのように吹っ飛んだんだと思われる。爆発の方向を調整したのでこちらには土砂などは飛んで来ないと思うが…音まではどうしようもなかった。


『こちら観測班、どーぞ?』


『あぁ…って、どーぞって?』


『あー、ノリだから気にしないで…で、巣穴跡だけど』


「どうしたの?」


「あぁ…偵察に向かった味方からの連絡だ。気にしないでくれ」


「そう…」


ザックは耳に指先を当てて集中する振りをする。尤も、そんなことをせずとも聞くことは可能だが…その間は声を掛けて来ないだろうと期待しての「振り」だ。


『えーっと…いいかな?』


『どうぞ』


『巣穴跡の状況だけど…クレーターでも空いたかと思う状況になってるよ』


そして静止画のみが送られてくる。


『うわぁ…』


半径1kmと少し程度のクレーターができていた。深さは少なくとも50mよりは深いだろう。林の中なので光量が足りないし奥は影が降りていて見えないのだ。穴の周囲も少しばかり木が吹き飛ばされているがそれでも山の中なので暗いっちゃ暗い。


『倒木だけど持って帰る?』


『まぁ…余り焼け焦げてると木炭にするしかないけど。使えないこともないしな』


『わかった!…回収班を編成して運んでるから、回収宜しくねぇ~?』


うわ又か…とか、木の在庫が増えまくるなぁ…などと呟き、重い足音が聞こえて来たなと思ったら、どんどん木材というか木が詰まれて行くので…仕方なくストレージにどんどん収納し、横で目を見開いて驚愕しているソァーヌが居て…


「あ、やべ。隠すとか説明するとかも忘れてた…」


と、うっかりミスを連発するザックであったw


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村娘たちは…減った体力を回復する為に食事を出されてベッドで寝ています。ソァーヌは取り敢えず体力回復薬スタミナポーションを渡されて飲んでビックリして、お礼を述べて…現在に至ります(大雑把過ぎる状況説明だ(苦笑))


備考:生存者9、死亡3、生死不明1…とあったけど、ドワーフ娘は探知魔法を弾く程の魔力を持つクイーンの傍にいたので生死が判断できなかった為。正確には生存者10、死亡3となってます。死亡3の亡骸の傍には身元がわかる物も無かったので、ザックは焼滅処分しています(遺髪という考えもなかったので諸共ですが…(苦笑)←スケドは死亡時に発動する魔導具なので死亡して暫く経過してる場合、効果を発揮しようがないので…)

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