58 その15 ~サンフィールドに往こう その15~

ドライールド領兵の頭(兵長)が短気を起こして突貫!→ザックたちの用意した罠にはまり、立ち往生!→兵長の切り札(シノビの者)を放つが逆に捕縛される!→ザックの罠に咥えて水攻めを受けて溺れそうになる!←いまここ

結局、水位を下げて監視を残してザックたちはサンフィールド領主婦人のミランダ婦人にお伺いを立てにサンフィールド領へと戻るのであった!(目と鼻の先だけども)

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- サンフィールド領主の館 -


「…という訳で、ドライールド領兵の主力部隊を捕らえているのですが…」


かくかくしかじか…と説明をするザック。ちなみに本当にその8文字で通じれば詮無いのだが唯の比喩なので気にしないように!(苦笑)


「…お話はわかりました…が、何故そのような危ないことを…」


と、お説教が始まりそうになるが、レムが遮って追加で説明することに。簡単にいえば…



◎敵兵の長がいきなり進軍を開始したこと(宣戦布告から1時間と待たずに進軍開始)

◎放置しておけば今頃街の中で戦いが始まっていた…故に進軍を強引にでも止める必要があった

◎街中の潜伏兵の工作により、門がザルになっていた可能性も否めない…というのもある



大体はこんな感じであろうか?…兎に角、あのまま進軍を許しておけば数日を待たずしてサンフィールドは陥落。数千人(実際にはそれもブラフで千人前後程度だったのだが…)の領兵に荒らされていたかも知れない。少なくともサンフィールド側の衛兵や私兵は合わせても千人は居なかった(残存している人数は…という但し書きが付くが。大半は未だ水を求めて外の国に出向いているとのこと…流石に数箇月では呼び戻しても戻れないのだろう)為、ましてや対人戦闘に慣れてるかどうか怪しい人員しか残ってない…


「…はぁ」


ミランダ婦人は溜息を吐く。


「そこまで見透かされてたなんて…ね」


「え?」


…と、統括体が困惑する。ま、まぁ…こいつが全ての部下の耳目じもくから収集した情報からそう判断したなら、強ち間違えではないと思うが…


「トウカちゃんて凄いのね。おばさんびっくりしちゃったわ…」


とう…か?


「あ、いえ…それ程でもありません」


統括体ゴーレムが頬を染めて謙遜している。つか、名付けされて手籠め…じゃない、飼い馴らされ…これも違うな…えーと………


「マスター、どうされましたか?」


「あ、いや。なんでも…」


統括体…トウカって呼んだ方がいいのか?…何か、こう…先に名付けされて悔しいというか…1箇月だけの期間限定だから名前付けて情が湧かないようにしてたのに…何て思っていると、


「…わかったわ。ドライールド領の面々はこちらで引き受けます。現状を説明して!」


と婦人が割り込んで来て、統括体は慌てて説明に戻った。


「マスター、トウカちゃんを取られて悔しい?」


(んなっ…)


レムに現在の心境をズバリいい当てられて…


「んな訳ないだろ…」


といい返す。勿論、天邪鬼あまのじゃくな言葉なんだが…悔しいのは当たってるだけに…な。ま、まぁ…未だに主従の関係は変化してないが。簡易的ではあるが思考コアは人間に近い心理もゴーレムに持たせる。一生懸命、ミランダ婦人に説明をしている統括体を見ていると…


「はぁ…」


と、溜息を吐かずにはいられなかった…


『アンニュイな気持ち?w』


『あのな…』


シャーリーの突っ込みに思わず乱暴に反応するが、今はそんなシャーリーの思いやり?に感謝かな…単に面白がってるだけかも知れないが(苦笑)



- ドライールド領兵・収監される -


「じゃ、この辺りにお願いします」


「おーけー」


サンフィールドにはそれ程虜囚は存在しない。だが、外部から来た者の中から時々現れる…水泥棒とか水泥棒とか…そして一応牢屋という物もあるのだが、それは僅かしか用意されてない。せいぜい数10人分しかないのだ。そして今回訪れた外部の人間は千人に満たないが、それでも数百人は居る。飲み食いさせる水と食料は輜重部隊が運んでいたものを使うとしても、彼らを収監すべく牢屋が絶対的に不足しているのだ。


そして急遽湧いて出た…いや温泉じゃなくて…この依頼だが。取り敢えず外壁の外…砂漠に建造することになった。外側に土壁による簡易的な壁天井。そして中には鉄格子の牢屋。但し、囚人を収容できて外部に逃げ出さなければどんな素材でもオーケーと…


土操作アースクラフトからの…」


…と一旦溜め込む。頭の中では外側に土壁の壁と天井を。中が暗いと涼しいけど外からの監視が容易になるように壁は半透明にしておく。流石に天井まで透明だと直射日光がキツイだろうから、そちらは日照を遮るようにしておいた。中の鉄格子も砂を加工した物だが一応硬度も耐久値も砂を加工した最上級品にし、例えミスリル製の剣でも切れない程度には頑丈にしておいた(壁の方は鉄格子以上に頑丈だけどw)


土壁アースウォール!」


ぶわっ!…と壁が生え、天井も砂漠の中から浮き上がって所定の位置に留まると壁と融合される。そしてその中の牢屋となる鉄格子が生えてそのまま固定される。床が砂地のままでは掘って脱出される為、土壁と同様に堅牢な床に変化する。これで如何に魔法で掘ろうとしても穴どころか傷1つ付けられない牢獄の完成だ…が、1つだけではなく100棟程立ち並んだ。


1つの牢獄には1人用の独房が通路を挟んで左右に1つづつ並び合計10人が収容される。隣接する壁に相当する部分は鉄格子ではなく床と同じ壁があり、隣接する者と接触できないように前後の鉄格子の左右も壁が伸びている。尤も、鉄格子の隙間は5cmと無いので腕を伸ばそうにも大抵の者は指くらいしか入らないが…


「こんな物が一瞬…いえ、1分も経たずに…」


見学していた者が全員唖然としていた。一応「他言無用」の誓約書を書いた者だけ見学を許可したのだが、大丈夫だろうか?(誓約内容を破った者は、今後30年くらい…頭痛と腹痛に悩まされる(薬でも魔法でも治らない…罰というよりは呪いに近いが…無論、解呪でも同様に治せない)罰則を記しておいたが…)


「収容人員10名の牢獄が100棟、だと?…俺は何を見せられているのだ?」


(いや…何もクソも、土魔法で牢屋を創っただけですが何か?)


敷地面積が結構広大になったし、監視しないといけない為に牢獄以外にも監視員の詰め所やトイレ(牢屋にもぼっとんトイレが設置済み)を設置し、既に存在する外壁の外にも外壁を建造…


(いいのかな?…勝手に犯罪者収容牢を砂漠に建築して…)


まぁ…土属性魔法という名の生活魔法なんだけど。厳密には生活魔法に内包されている属性魔法の1つ…かな?…でガシガシ建ててる訳だ。流石に牢屋は簡単だけど、監視員用の詰め所とかは内部構造がわからないので簡単な設計図を見ながら建てた。余りにも細かい部分は後で専門家に丸投げで済ませたけど…いや、内装までどうしろと(この辺、木とか生えてないし、砂から何でもかんでも創造すると思ったより魔力消費するのでMPポーション飲み過ぎでさっき創ったトイレのお世話になっちゃうし…orz)


(シースルーな壁の中の牢屋で衆人環視の場で用を足すとかどんな嫌がらせ?)


ま、まぁ…隣接した壁は、隣人と合図とかされて悪だくみされそうなので殆ど見えないんだけどね…鉄格子の向こうは見えるから間接的にやられそうだけどそこまで世話焼けないわ…面倒だし。


…ま、そんなこんなで割と広い敷地面積に監視付き牢獄棟が完成した。取り敢えずドライールド領との交渉が終わるまで保てばいいという条件なので、頑丈だけど1年も長期化しないよね?…と考えて1年の間はその姿を保つように設定した。それを過ぎたら?…中の人間毎消滅しますが何か?


(建物だけ消えて収監してた囚人が逃げたら笑えないし、ねぇ…)


冷たいことをいうようだけど、この世界は生き物に対して厳しい。飢え死にや干乾びて死ぬよりはまだマシなんじゃないだろうか?…収監されてる間だけは、飢えも渇きもある程度感じないで済むんだしね。特に砂漠では…


(砂漠の上に建造されてんのだけどね…この牢獄って)


ちなみにぼっとんトイレの下は砂漠のかなり深い部分まで穴空いてるし、水は自動で水魔石から供給される。独房なので1日に必要な大人1人分の水に少し足りないくらいで。どーせ運動したりしてないからね(食事は監視員の人が運ぶしかないけど…いや、味も旨味も無い粉状の食料なら自動で供給できるけど…試食して貰ったら「絶対嫌だ!」って拒絶されたから採用は見送られたよ…栄養価は高いしかなりの省力化になるんだけどねぇ…)


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合理化を突き詰めると人間性は限りなく失われていくっていう…囚人なんだから贅沢いうな!…って思うんだけど、ねぇ…(苦笑)


備考:牢獄建造の対価は後日。ミランダ婦人はもとより、サンフィールドの偉い人たちに人外認定されつつあるザックに明るい未来は来るのだろうか?(否、来ない!w(ザック「酷ぇっ!」))

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