脱中心化

猫の達人

エピローグ

私は月収45万の仕事をしている。日本の平均月収は32万だから、ちょっと高めかな。でも中央値だと約29万。そう思うと箱ひげ図の第三四分位数ぐらいに居ると思う。関係ないけど。


私は都内某所にあるいわゆる自殺の隠れた名所的なところで働いてる。


どんな所かというと、一見普通のロープウェイ乗り場に見える。しかし、本当はロープウェイの下山方面に乗る人はほぼ帰ってこない。遭難したのか、底の見えない崖から滑り落ちたのか自ら落ちたのか。警察も何度も捜査に踏み込もうとするが、深さが読めないし船も寄り付かない海が下には広がっている。


私は下山方面のチケットを買った人と話をする仕事をしている。ロープウェイが来るまでの35分間。最期のひと時、若しくは希望を見出してチケット代の返金処理をするのか。


どの結果になっても私は干渉しない。それを自分の中のルールとして緩やかに働いている。ある月は全く人が来ない。ある月は2人同時に話をする時もある。でも私はこの仕事が好き。どんな結果になっても。

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