愚かな私の無意義な一日

深谷花びら大回転

ある作家志望の無意義な一日

 文章力ってなんだろ? 日常会話で使わないような難解な文字を並べておけばいいのかな? 多少稚拙でも読者に伝わればいいのかな?


 夏の夕方。冷房効いた自室にて、私は一丁前に考える。今日はまだ、一文字も生みだせていない。


『今日はもう無理、明日頑張ろう!』と迎えた日曜日。午前中からパソコンと向かい合ってはいるけれど、ただそれだけ。テキストカーソルが物言いた気に点滅している。


 まあまあ落ち着け。焦らすな。その内スイッチが入るから、お前を先に進めてやるから。


 そう何度も言い聞かせ、気付けばこんな時間。


 仕事嫌だなと憂う時間帯。先週の私とかわらない。


 作家を目指して早2年。レーベルへの応募を早々に諦めウェブ小説に勝負をかけた私は、未だ無関心の壁を崩せずにいる。


 始めたばかりの頃は『アンチとか嫌だな~』なんて心配をしていた。それが杞憂であったと理解させられたのは投稿開始から間もなくして。


 どれだけ投げても一向に読まれない。その事実と直面し、無関心の壁と相対した。


 ああそうか。身の程を弁えていなかったのか。


 アンチが湧くのは人気の裏返し。無名の私が書きたいものを書いても、誰も見向きもしてくれない。


 駆け出しの私がすべきことはファンの獲得。


 ファンを獲得するには読まれることが前提となる。


 どうやって? 簡単だ。流行に乗ればいい。


 つまらない。真の天才は凡人が歩む道をかずとも、己の才能で強引に納得させることができる。


 成り上がりの王道を蹴った私は、自分を天才と信じて止まなかった愚か者。残っているのは未完の物語達。


 目を向けられない日々に自信は底を尽きた。と、悟った見せかけの内に、今尚ある『私は天才』という自惚れ。


 つい最近知ったフレーズ――『創作者に求められるのは百聞を一見にする想像力だ』……私の胸に響いた言葉。


 この言葉を誰かに言いたい。


 誰に?


 誰でもいい。


 この言葉を使っている自分を想像するだけでよだれが出そうになる。


 そんな私に絶好の機会が訪れる。


 友人からの食事の誘い。私が創作活動をしていることを知っている友人からのお誘い。


 断る理由がどこにある? どこにもない。どうせこのまま部屋に居ても言葉は思い付かないし……いつかは筆が乗るだろう。


 そう自分に言い聞かせ、シャットダウン。パソコンを閉じて支度を始める。保存する必要はない。


 家を出る時、ふと浮かんだ『このままでいいのだろうか?』という疑問。


 私はそれに蓋をして、胸を張って歩き出す。








 今日も今日とて一文字も生まれない。

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愚かな私の無意義な一日 深谷花びら大回転 @takato1017

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