日常
文化祭が終わって2週間ほどが過ぎた。
いろいろなことがあったけど変わったことはそんなになかった。
「先輩、明日デートに行きましょうっ」
リビングのソファでぐったりしているところを横に座る萌香に話しかけられる。
変わったことと言えば、萌香が頻繁に家に来るようになったことだ。
休日は毎日、たまに平日に来ることだってある。
「……嫌だ」
俺は少し考えて断った。
「えー、どうしてですか?かわいい後輩とデートですよ?」
案の定、うざ絡みしてくる萌香。
……いや、別に萌香と出かけるのはいいんだよな。
でもどこか心の奥で何かが引っかかる。
なんだろうこの感情は……。
まあ、考えたところで黒い霧に邪魔されてわからないんだけど。
「というか、今の状況ってお家デートというやつじゃないのか?」
なんか理由もなく断るのはさすがに酷いと思ったので誤魔化すことに。
……どちらにしても酷いな。
「ええ〜、そんなふうに思ってたんですね、先輩っ」
本人は喜んでいるから良いとしよう。
「もえちゃん、バカ兄。私がいること忘れてない?もえちゃん、甘い言葉に騙されてるよ」
ふと、後ろから呆れたような声が。
「先輩っ!これお家デートじゃないですよっ!」
えぇ、さっきまで上手く行ってたじゃん。
というか、花音がリビングにいること忘れてたな。
……どうしよう。説明しようにもできないしな。でも、このままだと萌香は不安になるだろうしな。
「バカ兄、今日の夕ご飯の材料買ってきて」
花音に突然お遣いを頼まれる。
え、今から?
いや、時間的には4時だし丁度いいのかもしれないけど。今は萌香がいるし。
それに昨日買い出ししてたよね?
「あ、荷物多くなるかもだから、もえちゃんも行ってくれない?」
あぁ、そういうことか。
「いいよっ!先輩、行きましょうっ!」
萌香が嬉しそうに俺の手を取る。
ありがとう、花音。
「はいはい」
「かわいい後輩と買い物ですよっ。実質夫婦ですよっ」
「そんなわけあるか」
だとしたら俺と花音は熟年夫婦になるよ?
萌香は俺のツッコミを無視して家を飛び出した。
俺の手を持って。
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