第2話 3

ーNo SAIDー


【翌日】



今回の任務はマレの訓練を兼ねた偵察。

砦から1番近い街を目指してベルのゴーレムで進む。


近いとは言っても半日はかかる距離な為に日が昇る少し前に行動を始めた。




「んじゃ、出発。」




“心の0段”




キーウエポンを起動させたベルは、ノラ全員分のユニコーンを作った。

土と石で出来たゴーレムは、首を振ってアイク達に近づいてくる。



「そう言えば、ベルのゴーレムに制御範囲なんてあるのか?」



「んー。

一応、五㎞圏内なら視界に入らなくても制御は出来るが…それ以上距離が離れると制御できる自信がない。


俺の目の届く所なら、効果が無くなりかけても直ぐにかけ直せるけど…暴走したら困るから、可能な限りは離れなくないかなぁ。」




B.Kの問に答えたベルは、ユニコーンに跨がった。


全員がユニコーンに乗ると、アイクを先頭にベルとB.K、マレを守るようにアンナとシオ、殿でエグザスとハゲの列で進む。





「そう言えば、ベルってユニコーンって好きなの?」



「…それは、シオに聞いてれ。」





マレの問にベルは、呆れた様子で首を振りながらそういった。

首を傾げたマレはそのまま、シオの方に顔を向ける。



「えー、いーでしょ。

ベルの能力を使えば、ユニコーンとかドラゴンとか実在することが出来ない物も創れるんだから。


それだったら、馬よりユニコーンのほうがいいでしょ?

それに、動いているのが見れるのはこんな時位だし。」



「当たり前だ、中々の大きさの馬を作るのは結構大変なんだ。

しかも、1体や2体じゃないし。


…まぁ、以前の要求に比べたらましだけどな。」




嬉しそうに両手を広げているシオに対して、ベルの表情は暗かった。

まぁ…本好きなら、要求も多かったのだろう。



「そうだな…要求が酷い時は、龍が良いって言ってたしな。

私は、龍の方が戦闘力があって好きだったけどな。」



「まぁ、あの巨大を動かすために俺が体の3段をかけた位の身体能力を持たせてたし…翼のお陰で空も飛べた。


おまけに、シオの要望に答えて鋭い爪に逞しい尾、恐ろしい牙に口から技の1段である火の玉を吐けたからな。」




シオの過去にあった要求をまるで、他人事のように言ったB.Kは、どこか楽しそうに微笑んでいた。

ベルは、龍についてサラッととんでもない事を言ったけど、くたびれた表情は一切変わっていない。



警戒をしながら進んでいたが、獸に遭遇することなく任務開始地点に到着した。


街を囲む大きな外壁が見えると、ベルが心を解除してユニコーンを消した後に前日に言われたチームに別れる。



“体の2段”


“体の1段”



マレとエグザスは、2段。

それ以外は、1段をかけた。



「何度も言っているが、指示は一つだけ死ぬな。

情報なんて二の次でかまわない。


今回に関しては所詮、マレの訓練だ。

死なない程度に肩の力を抜いて行ってくれ。


それじゃ、散れ!」




アイクの一声で、それぞれのチームは目的の場所を目指して走った。



アイク達と分かれたマレ達はとりあえず、ジャミングの機械を使って監視カメラから逃れ1番高いビルに上ることにした。




「…っつ!」


「そうか、マレは初めてみるのか。」




4人は、目的地につくとビルの上に上がり身を潜めるように辺りを見るとマレは引き攣ったような小さな悲鳴を上げる。


マレ達の視線の先には、ハイハイの体勢になった全裸の人達が首に紐をつけられて引っ張られていた。

まるで、人が犬を引っ張るように。



初めてみるようで、ひどく怯えたマレの両肩をB.Kは後ろから優しく握った。



「こんなので、一々気にかけていたらキリがない。

そんなもので、感情を乱してないで体の使い方を少しでも学べ。」


「…エグザス。

お前の言いたい事は分かるが、マレは初めてなんだ。

少し位、言葉を選んだらどうだ?」



エグザスの一言に対して、B.Kはやや強く注意するとマレの隣に移動する。

そして、下を指差す。



「獸の支配で苦しんでるのは、苗床である女だけじゃないんだ。


男だって、強制労働で苦しんでいる。


それだけは、忘れないで欲しい。」



B.Kは、険しい表情で諭すようにそう言った。

ベルはマレの後ろから下の様子を険しい表情で見た後に口を開く。





「良い機会だ。

マレ、お前は“間”について何処まで知っている?


とりあえず、小休憩を兼ねて説明しとくよ。

…“間”について。」

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