カッコ悪いが良いんだよ

門前払 勝無

読みなはれ!

「カッコ悪いが良いんだよ」


 空き地に光るメリーランドを見つめていた。


 夜空の星の輝きに負けないくらいの煌びやかなメリーランドー。

 セクシーなランジェリーを着た死神が白馬に乗って手招きしている。俺はカズキの編んだマフラーを巻き直して死神に近付いた。


 ー夢。


 目を開けるとタイル壁の冷たさにプルッとした。

 埃まみれの裸電球を見て“なぜ汚いトイレでパンツを下ろしたまま倒れているのか”を思い出した。

 ビリヤードで負けてスピリタス、あぶさん、クエルボをシェイクした酒を三杯飲んだからトイレでぶっ倒れたのである。


 俺はフラつきながら立ち上がり個室を出ると見慣れない女が化粧直ししていた。女は鏡越しに俺を見るとフフッと唇を緩ませた。

 俺はパンツをあげていなかったのである。


 いつものカウンターに戻り含み笑いをするマスターが蒼い綺麗なカクテルを出してきた。

「これ口直しね」

「なんすか?これ」

「カリフォルニケイション」

「はぁ?何言ってるのか解らん」

「竜吉にはお洒落すぎだね」

そんな会話をしていると隣にさっきの女が座った。

「シャンディガフください」

「はい」

マスターは女の注文を作り始めた。


「さっき何でズボン下ろしてたんですか?」

女が話し掛けてきた。

「君があまりにも美しかったからついついパンツを降ろしてしまったんだよ」

女はタバコに火を付けた。

「美しい女を見るとパンツを降ろすんですか?」

「まぁね…審査してもらわないとだからね」

「キモいですね」

「へへへ!」

俺はわざとらしく笑ってジュークボックスに向かった。


 217番「heyheymymy」


 ニールヤングの声とブルースが流れた。

 ロックは死んだ。そんなの認めない。ロックは心の中に鳴り響くのだ。


 女は今日が誕生日だと言った。

 俺は歳を聞いたが答えなかったから歳の数だけテキーラを奢った。


 女は22杯飲んだー。

 ベロベロに酔っていた。

 俺も釣られて数杯飲んでヨレヨレになった。

 二人でロータリーまで行くことになり3ブロック先はホテル街の所まで来て女が予備校の花壇にゲロ吐いた。


 オロロロロ……


 俺は女の髪を手で束ねてあげた。背中を摩りブラのホックの感触を楽しんだ。

 が、女のゲロの匂いで俺も釣られゲロ吐いた。


 オロロロロ……


 二人してベロベロのヨレヨレで夜空の星を眺めた。


「カッコ悪いけど…今日独りじゃなくて良かった」

そう言う女の瞳を見つめてると再び嘔吐した。


 オロロロロ……


「今、私の顔見てから吐いたでしょ!失礼!!」

俺は笑って“ごめん!”とウィンクした。

 女も笑ってる。


おわり

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