第3話 負けず嫌いな涼姫さん
翌日の放課後。
俺は涼姫さんと昨日出来なかったゲームをやるため、1人で部室に向かっていた。
涼姫さんはというと、「先に部室に行ってて」と言ってホームルームの後すぐにどこかへ行ってしまった。
「涼姫さんどこ行ったんだろ?まぁ、遊戯部の備品でも漁りながらゆっくり待つか」
そう思い、掃除したばかりの部室の棚を漁ってみる。
昨日はゆっくり見る暇がなかったが、かなりの数の『ゲーム』があるようだ。将棋や囲碁や麻雀、オセロやトランプといったものから、始めて見るような海外のボードゲームまで。中でも気になったのが、やはり昨日できなかった古い家庭用ゲーム機だった。
『フレンドコンソール』(通称フレコン)
1991年発売。
90年代に一大ブームを起こし、「一家に1台フレコン」と言われた時期もあった。しかし、その勢いも次第に衰えていき、約20年前に生産終了。今ではプレミアがついているとか。
まさかこの学校にあるとは…
ゲーム好きな俺でも初めて触る代物だ。かなり古いけどちゃんと動くのか?
そんなことを考えていると、
「おまたせ!」
はぁはぁと息を切らしながら、涼姫さんがすごい勢いでやってきた。
「どうしたの?そんな息切らして」
「これ、借りて来たの!」
涼姫さんが持ってきたのは台車に乗ったテレビだった。そう、この部屋にはゲームはあっても肝心のそれを映し出すテレビがなかったのだ。
「準備が早いね」
「うん!早くやりたくて、走って来ちゃった」
相当楽しみにしてたんだな。涼姫さんのキラキラした目が眩しい…
「じゃあ、早速やろっか」
「うん!」
▼
セッティングを済ませ、フレコンを起動すると、テレビにゲーム画面が映し出された。
ちなみに、昨日の掃除でフレコンと共にゲームソフトもいくつか見つかっていた。その中でも俺たちが選んだのは、『モンティーカート』というゲーム。最大4人でプレイ可能なレースゲームで、今もなお続いている大人気シリーズだ。
「私この手のゲームで負けたことないから、月ノ瀬君にだって絶対負けないよ」
「お、俺だって負けないさ」
涼姫さんは真剣な表情だ。昨日から思っていたことだが、涼姫さんはゲームのことになると人が変わったかのように感情が豊かになる。いつものクールな感じとはだいぶ印象が違う気がする。
ゲームを進めると、早速キャラ選択の画面に切り替わった。
このゲームにはそれぞれ特性の異なる15種類のキャラクターがいて、プレイヤーは自分に合ったキャラを選択して対戦する。ちなみに俺は初心者でも扱いやすいサルの『モンティー』、涼姫さんはスピードがでるが、コントロールしにくいライオンの『マッハ』というキャラを選んだ。
涼姫さんなかなか上級者向けのキャラを選んだな……もしや相当やり込んでるのか!?
涼姫さんの醸し出す謎の強者感に俺は内心ビビっていた。
「準備オッケー?」
「うん。いつでも大丈夫だよ!」
自信満々と言った感じの涼姫さん。
俺が準備完了ボタンを押すと、ゲーム内アナウンスが鳴り始めた。ついに戦いの火蓋が切られるのだ。
【READY?】
【3……2……1……、GO!!】
▼
先に言ってしまうと、俺の圧勝だった。
合図と共に2人同時にスタートダッシュをきったのは良かったものの、涼姫さんはそのスピードを制御できず、「待って、止まんな〜い」と言ってコース外に突っ込んで行き、俺がリードを奪ってそのまま勝利。正直楽勝だった。
涼姫さんのあの自信はなんだったんだろう。
「ま、まぁ、まだ私本気出してないからね。これからこれから」
まだまだ負けを認める気はないらしい。
「も、もう一回やろっか」
「次は本気で行くからね」
俺もまだやり足りないと感じていたので、キャラを変えずにもう一度対戦することにした。
が、結果は変わらなかった。
スピードをコントロールできずコーナーに激突しまくる涼姫さんを尻目に、俺は安定した走りを見せ、ゴール。1回目より差がついてしまった。
まじかよ…
薄々感じてはいたけど、もしかして涼姫さんってゲーム下手、なのか…
「うぅ………」
頭を抱え唸《うな》りだす涼姫さん。
やばい…泣かせてしまったか!?俺も本気でやりすぎたかもしれない。
「…も……っかい(ボソボソ)」
「ん?」
「もう一回!!」
涼姫さんは部室内に響くほどに声を荒げる。
「えぇ…」
学校一の美少女の負けず嫌いな一面を知り、俺は軽くたじろぐ。
(でもまぁ、もう一回やればさすがに満足するでしよ)
そう思い軽々了承した俺が馬鹿だった。
まさか涼姫さんが勝つまでやらされるとは。
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まきしむです!
更新遅れました。申し訳ないです!
また明日更新しますので、よろしくお願いします。
フォロー、コメント等もして頂けたら嬉しいです!
では!
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