国民的アイドル達の中心は女装男子です!残念〜日常では平凡な男子、裏ではアイドル活動中〜
嵩枦(タカハシ) 燐(リン)
Prologue 6人の歌姫+俺(わたし)
本当に人生とは摩訶不思議なものだ。
時節は高校1年の秋。
たった17年しか生きていなくても、そう思えてしまう程に。
今…目の当たりにして巻き起こっている状況を客観的に
いや、もう椅子から立ち上がって一目散に逃亡したいのが本音だ。
でも、机の周りを複数女子学生に囲まれていては不可能だ。
「ねぇ!ねぇ!"
「青木パイセン〜ゲーセン寄ってこぉ〜」
「シラベせんぱ〜い、一緒にカラオケ行きませんかぁ〜」
「
「あ、青木くん。一緒に帰りませんか?」
「みなさん!なんで兄さんを誘うんですか!特に静香ちゃん!?何で中等部からこっち来てるの!?てか、シラベ呼びダメだって!?」
四方から矢継ぎ早に掛けられる誘いのお声。
机の周りを目を惹く六人の美少女に囲まれては、男としては幸せを感じるところだろう。
しかし、俺…
逆にだ。
数多のクラスメイト…ひいては隣のクラスの生徒までもが一体何事だ?という野次馬根性丸出しの奇異な視線を向けてきて、非常に身の置き場に困ってしまう。
そんな俺の心情など知らず、眼前の状況は移り変わっていく。
唯一中等部の学生である少女へと俺の義妹が食ってかかっていく。
「う〜ん?何か問題ありますかぁ〜?」
「あるよ!貴女、中等部!ここ高等部!中等部の生徒がわざわざ高等部に来たら悪目立ちするでしょ!」
「します〜?わたし、影薄いので〜そんなに目立たないので〜だいじょうぶですよ〜」
「目立ってるよ!?」
俺の義妹が頭を抱えて声を上げた。
問題の女子中学生は眠そうな眼でこてんと首を傾げる。
中等部の制服の上に少しサイズが大きいパーカーを羽織っていて、少し目立つがそれ以上に彼女の整った顔立ちが際立つので余計に目を引きやすい。
確かに気配を消すのに長けているのは知っているが。
「先輩も!?大崎先輩、忙しいんじゃないんですか!?」
義妹のは矛先は次に一番上の先輩に向いた。
先輩学生は小首を傾げ答える。
「えっ?受験の話?」
「そうです!先輩確か○○大学志望でしたよね?あそこ偏差値高いんですよ!勉強しなくて良いんですか!」
「ふふふ。心配ご無用!もう指定校推薦貰えるの。うちって一応進学校だしね。一枠勝ち取ったよぉ!」
「っ…普段、大雑把な性格な癖になんと抜かりない!!無駄に頭が良い人はこれだから!」
「どういう意味!?」
義妹は先輩と呼んだ女子生徒の返答に口惜しそうに吐き捨てる。まがりなりにも目上の方に失礼な物言いだが、スルーすることにする。
だって、否定の言葉は見つからないから。
そうして、俺の目前で義妹と先輩、後輩が三つ巴の論争をしている間に…。
「青木くん、青木くん」
「なんだ?」
「みなさん、まだお話が終わりそうにありませんし、お先に抜けませんか?」
お嬢様然とした容姿をしてるにも関わらず、目に見えて面倒な闘争が繰り広げられている最中で、なんとも中々強かな提案をしてくる同級生のオタク女子の言葉に俺は迷う。
引かれる提案だが、それが叶う確率が少ない事は俺の中で予想されている。
なぜなら…
「あーー!?雪華ちゃん抜け駆けしてるぅ!!」
「油断も隙もない」
提案してきた女子生徒の背後に2人の夜叉?が現れた。
俺は目を瞑り、溜息を吐き出す。
目敏く見た目詐欺なオタク少女へ仲良しJK1年コンビが闘いを仕掛けにいった。
二組に別れた女子学生達のキャットファイトを第三者視点で眺めていると、俺のスマホに通知がきた。
スマホの画面を表示を映し、内容を確認する。
『シラベちゃんへ♡』
『急遽、仕事入れちゃったから6人連れて事務所来てね〜』
来たのは母からのショートメール。
あんまりに急な内容に思わず、スマホを握り潰しそうになるが理性を保ち、俺は眼前で争う6人に聞こえる声量で伝える。
「仕事だ。各人速やかに事務所集合」
『ーーーーっ』
俺の言葉に争っていた全員がピタリと固まった。
手早く身辺を片付けて、俺は席を立ち、教室からサッサと出ていく。
淀みない素早い動きに6人は誰も追随できず、ハッと我に還ると、俺の言葉をしっかり思い出しながらバタバタと教室から出ていった。
まるで暴風。
一過性の嵐が過ぎ去った後かのように教室の中は静まり返り。
多くの観客側だった学生達は7人が走り去っていった廊下に顔出して、彼らの去る姿を見届けた。
これは7人の歌い手ーーー否、6人の素晴らしき声と歌唱力を持つ少女と、類稀な才能を持つ"少年"の話。
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