ひまわり

父は中学で書道を教えていた。

角刈りで二の腕が太かった。

小一の夏、漢字の「一」だけを50回以上書かされて

二度と教わるかいと思った。


七十歳越えて三年間で三回肺炎になって亡くなった。

荷物に額縁に入った長尺の書があった。

応接間の壁にフックを三カ所付けて飾った。


その夜、初めてカラーの夢を見た。

版画用ローラーが、下から上へと色付けするように

瞼の裏側を下から上へと、少しずつ色付けされると

青い空とひまわり畑の中に

白い半袖シャツの若かりし父が、白い半ズボンの小さな男の子と

手をつないで笑っていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る