第1話『マレフィクス.ベゼ.ラズル』
転生して一年経った。
気付いたことがたくさんある。
迷うとこだけど、まずは両親のことだ。
父親はノア.ベゼ.ラズル、職業は農家だ。
マッチョで、常に優しい微笑みがある紳士だ。
母親はアイダ.ベゼ.ラズル、主婦。
どこにでも居そうな女性で、綺麗な顔をした落ち着いた女だ。
そして僕。
マレフィクス.ベゼ.ラズル、1歳の子供。
瞳の色は黒では無く、明るさが一切ない赤……両親から見ても顔つきが日本人ではないことが確かだ。
名前は長いし、慣れない名前だ。
まぁ、それなりに気にってるけどさ。
そして一番驚いた事実。
僕はてっきり、ここが外国のどこかだと思っていた。
違った。
結論から言うとここは異世界だった。
異世界というのは、言葉通り異なる世界ってこと。
つまり、地球ではないどこかだ。
なぜそれに気付いたか?それは、この世界に存在する二つの力を知ったからだ。
それは、どちらも科学を超えた力である。
一つは『魔法』。
異世界と言ったら、魔法をイメージする人も居るだろう。
この世界の魔法は、勉強と同じで、自分の努力次第で複数身に付く。
ただし勉強と同じで大人になればなる程、習得しずらくなる。
もう一つは『能力』。
これは魔法と違って生まれ持って身に付く才能の一つ。
誰もが3歳になると、自分の能力が自分で分かり、扱えるらしい。
能力は一人一つ。
ちなみに父は姿形を変えれる能力、母は衣類を生物に変える能力。
僕はあと二年待たなくてはならない……強い能力であることを願おう。
他にもここが異世界だと確信ずける理由はある。
例えば、人間や動物以外に、魔物という種族が居ること。
他にも、世界地図が見慣れない地図なこと。
「マーちゃんにその本はまだ早いかな〜」
母は僕のことを『マーちゃん』と呼ぶ。
父は『マレフィクス』と本名で呼ぶ。
窓からは外の様子が見える。
たまに父が僕を外に出すこともある。
これは父が教えてくれたのだが、僕が住んでいる場所は『エアスト村』と言う小さな村らしい。
畑仕事の人が多く、父もその一人だ。
能力や魔法次第では、一人で壊滅できそうなちんけな村。
当然、今の僕にはそれは不可能。
それに今は、この世界の情報が欲しい。
まだ何も行動していないが、街づくりならぬ街壊しゲームのようで楽しい。
計画したり、情報を集めてるだけでも結構面白いものだ。
* * *
二年が経った。
やっと3歳である。
この世界のカレンダーは分かりやすい。
なぜなら地球に居た時と変わらないから。
一月から十二月、季節は国や地域によって違うが、今この村は冬だ。
季節は真冬、日付は六月十三日、何の日かと言うと、僕の誕生日なのだ。
この世界にもしっかり誕生日と誕生日プレゼントがある。
父からは黄金のフォーク、母からは僕より一回り大きいクッション。
はっきり言って父のフォークは全然嬉しくない……普通のフォークで良いだろ普通。
まぁ、黄金は帝王らしくて好きだが。
クッションは普通にありがたい。
ニコニコヘラヘラ笑って居る両親、この二人を壊すのは楽しみの一つだ。
「マーちゃん、何か感じたことは無い?ほら、不思議な力を感じるとか」
母が、何か気になっている様子で聞いてきた。
きっと……とゆうか絶対、僕の能力が気になるのだろう。
「うーん、ケーキ美味しい!」
「そうじゃなくて能力よ。何か直感的に分からない?」
「うーん、特にないよ!」
純粋無垢な、3歳のフリが上手でしょ?
元映画監督なだけあって、演技には詳しく、上手なの。
それに、僕は六十年間まともな人間を演じてきた男……ハリウッドスター顔負けの演技力よ。
「貴方、どうしてかしら?心配になってきたわ」
「焦ることは無いさ、きっとまだ幼いから言葉に出来ないだけだよ。いつかちゃっかり能力を見せてくれるさ」
本気で心配してる両親がバカにしか見えない。
はっきり言って愉快愉快。
実は、自分の能力は既に理解している。
しかし、この二人にわざわざ教える必要はない……不利になることはしない。
それにしても、素晴らしい能力を手に入れた。
記憶を思い出すかのように、頭に直接自分の能力が伝わった。
この能力はいずれ見せる……君達共犯者諸君にも内緒にしておこう。
* * *
三年が経った。
僕は6歳から12歳まで、学校に入学することになった。
この世界は義務教育ではないが、多くの者が6歳から12歳までの六年間学校に通う。
この六年間の学校は、日本でいう小学校のようなものだ。
この世界では『基礎学校』と呼ばれている。
そして望むものだけが六年制の『専門学校』行く。
基礎学校だけは行こうと決意した。
なぜなら情報や知識や技術が欲しいし、この小さな村にも一つあるからだ。
国数社理英の五教科、魔法基礎、能力基礎、道徳、などなど。
国語と英語に関しては、名前が違う。
国語は『母語』になっており、英語は『共通語』になってる。
母語は母国の言語や人と人との対話、国語と大して変わらない。
共通語はその名の通り。
この世界には、全部で47の国が存在する。
その47ヶ国全てに、共通する言語が共通語である。
魔物の中には、共通語が分かる者も居るとか居ないとか。
共通語があるなら母語は要らないと思うだろ?
実際はその通り。
だが、人間ってのは国の文化や言語を大切にする。
一見意味のないことも、人によっては大切だったりする。
価値観の違いだろう。
そういうのがあると思うと、より壊しがいがあるね。
数学、社会、理科は日本とほぼ変わらない。
数学は、足し算・引き算・掛け算・割り算など変わらないし、社会はこの国の歴史や法律だったり、理科なんて変わったとこが分からないくらいだ。
そして僕の国は『エレバン』と言う名前の国で、世界番号は『6』。
世界番号ってのは47ヶ国全ての国に、数字を割り振っただけのものだと捉えて良い。
ちなみにエレバンは、それなりの大国で先進国だ。
* * *
四年が経った。
大分知識が付いた。
突然だが、良く日本人は異世界に勇者と魔王を登場させるよね?
実はこの世界にも、魔王が居るらしい。
我が国エレバンは、魔王に恐怖している国の一つだ。
だが、世界に絶対悪は一つでいい。
魔王はいつか探し出して消してやる。
魔王はさておき、魔法の話をしよう。
魔法は勉強と同じと言ったけど、はっきり言って勉強より難しい。
魔法には『火』『風』『地』『水』『光』『闇』の六つの基本属性があり、そこから複雑な魔法に派生していくのだが、派生した魔法を習得するものはなかなか居ない。
まず、属性を二つ以上扱うことが難しい。
例えるなら、医者の免許と弁護士の免許どちらも取る感じ。
派生した魔法を得るのは、それ以上に難しい。
だがら派生の魔法を考案する者は居ても、扱う者は少ない。
だが、このマーちゃんことマレフィクスは、この世界の絶対悪になる存在。
魔法なんぞ、手の中に包むように支配してやるぜ。
ちなみに火は風に、風は地に、地は水に、水は火に相性が良く、光と闇はお互いに相性が良い。
今は火属性の魔法を習得中だ。
他の奴らよりは、頭一つ抜けて魔法を扱えるが、まだまだだ。
今できるのは火の玉を放ったり、直接触れて物を燃やしたり。
魔法は拳を振るったり、逆立ちしたりすること同様、体力を使う。
童話とかの話にあるような、マナとか魔力量は存在しない。
体力を使うのはデメリットだけど、体力は身に付く。
努力次第でたくさん魔法を使える。
* * *
二年が経った。
12歳になり、学校ももうそろそろ終わる。
つまり卒業、同時に善人として振る舞うのも卒業。
悪役開始まであと一週間。
取り敢えずこの村を滅ぼそう。
老若男女関係なく皆殺しだ……もう僕に必要はない。
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