第1部 “レベル0”の覚醒
第1話 チートスキルねーのかよっ!
弦人はその場に座り込んだ。
「さー、どーしよー、これ......」
弦人は頭の中で状況を整理した。
これ、やっぱりアレだよな......異世界転生......
いや、生まれ変わったわけじゃないから、異世界転移のほうか......
て、ことは、異世界転移といえば、もれなくすごい能力が!?
弦人は期待で胸を膨らませた。
だいたいアレだよな、ステータスとか開いたら、いきなりレベル99だったり、すごいスキルが備わってたりするよな......
えーと、だいたい、こんな感じの動きをすると、ステータスバーが......
弦人は空中で画面をスワイプするような動きをしてみる。
が、何も起きない。
他にもいくつか、それっぽい動きをしてみるが、出てこない。
「いや、でねーのかよ!!」
弦人は誰に対してかわからないが、そうつっこんだ。
音声入力かもしれないと思い、「ステータス」や「コマンド」など、思いつく単語を発してみたが、何も起こらない。
だめか......
とりあえず、魔法かなんか使えねーかな......
弦人は立ち上がって、右手をかざし、力を込める。
そして、炎をイメージする。
が、何も起こらない。
「いや、せめて、魔法くらいでろよ!!」
またも、一人でつっこむ。
やはり、呪文が必要なのかもしれないと思い、「ファイアー」や「炎よ」など、それらしい言葉を発してみるが、やはり何も起きない。
くそ、じゃ、せめて、身体能力がすげーパワーアップしてるとか......
弦人は周りを見回す。
少し離れたところに、大きい岩を見つける。
長径1メートル以上ある。
弦人はその岩を両手でかかえ、持ち上げようとする。
「ふんぬっ!!」
全力で持ち上げようとするが、びくともしない。
だめか......なら......
弦人は右手で拳をつくり、全力でその岩に叩きつけた。
「痛い......」
ただ痛いだけだった。
くそ、なら、スピードは!?
弦人は一直線に100メートルほど走った。
「去年より、タイム落ちてるな。やっぱり受験でだいぶ体力落ちたか.........って、そういう話じゃねーよ!!」
全く普通だった。
うーん、あと思いつくことは......
異世界モノで、あんまりないけど、物を超高速で投げれるとか......
弦人は近くに落ちていた野球ボールほどの石を拾う。
そして、野球のピッチングのフォームで投げてみた。
石は普通のスピードで飛んでいき、近くの茂みに消えていった。
だめか......
なんか一個くらいねーのかよ、すごい能力......
と、そこで、石が消えていった茂みががさごそと動いた。
ん?
そして、茂みから、一匹の生き物が出てきた。
緑色の肌、尖った耳と鼻。
猫背だが直立で立っている。
大きさは人間の大人の半分くらいだ。
あー、やっぱり、最初にでてくるのはゴブリンなのね......
弦人はそこであることに気付いた。
そのゴブリンは頭にコブができており、左手には、先程弦人が投げた石を持っていた。
まさか......
ゴブリンの表情は、怒りに満ちていた。
そして、
ぐあぁぁぁぁぁっ!!
と、大きな声で叫んだ。
すると、茂みからさらに何匹ものゴブリンがぞろぞろとて出てきた。
「あー、えーと、これは事故なんですー。私、今、この世界に来たばかりで、右も左もわからないもので......」
弦人は、通じるかわからないのに、日本語で言い訳をしながら、後退る。
ぐあぁぁぁぁぁっ!!
その咆哮で、ゴブリンたちはいっせいに飛び出した。
「あーっ!!やっぱり、だめかーっ!!」
弦人はゴブリンたちに背を向け全力で走りだした。
ゴブリンたちも全力で弦人を追う。
「あーっ!!くそーっ!!何なんだ、この世界はーっ!!」
弦人は不満を絶叫しながら、全力で逃げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます