東大落第生の異世界生存戦略〜東大に落ちて浪人するか悩んでたら、なぜか異世界に飛ばされた。仕方がないから、異世界でてっぺんとる!!

阿々 亜

プロローグ

 お、落ちたー


 相馬弦人は心の中で絶叫した。


 場所は東京都文京区、東京大学本郷キャンパス。

 合格者発表掲示板の前である。


 掲示板にはおよそ100個の数字が並んでいる。

 が、そこに彼の番号はない。


 相馬弦人、高3の2月。

 たった今、第一志望東京大学に不合格となった。


 あー、これからどうしよう?


 弦人は、掲示板に背を向け、とぼとぼと歩き始めた。


 周囲には、「うおーっ!やったー!」と歓声を上げる者、「うそだーっ!」と絶叫する者、彼のように無言で落胆する者と様々だ。


 後期日程、どっかテキトーなとこ受けるか?


 これからのことを考えながら、彼は銀杏の並木道を正門に向かって歩いていく。


 でも、第一志望諦めたくないよなー。


 程なく正門が見えてきた。

 歴史を感じさせる石造りの門だ。


 いや、でも、親父が、浪人許してくれないよなー。


 怒り狂う父親の顔を思い浮かべながら、彼は正門をくぐった。


 ずっとB判定だっけど、最後の模試はA判定だったんだけどなー。


 正門を出たあと、最寄りの地下鉄駅に向かう。


 部活、やっぱり2年で引退しとくべきだったかなー。


 駅までは徒歩10分弱であった。

 周りには同じく合格発表帰りの受験生たちがぞろぞろ歩いている。


 悪足掻きで、3年の夏まで大会でたけど、結局優勝できなかったもんなー。


 今年一年を振り返っていたところで、横断歩道の赤信号に引っかかり立ち止まる。


「あー、ゼロからやり直してー」


 募り募った思いから、彼は無意識に、そんな言葉を呟いていた。


 次の瞬間、周囲から音が消えた。


「え?」


 弦人はすぐに異変に気付いた。


 騒音の塊のような東京のど真ん中で、突然音が消えたのだ。

 気付くのに、1秒とかからなかった。


 弦人は周囲を見回し、さらなる異常に気付く。

 彼以外の全てのものが、動きを止めていたのだ。


「なに、これ?」


 信じられない異常な状況に、弦人は間の抜けた声をあげた。


 そして、異変が起きてから数秒後、さらなる異変が起きた。


 上空に強い光の球体が現れた。

 球体は野球ボールほどの大きさだった。


 光はゆっくりと弦人の前に降りてきた。


「なんだ、これ?」


 弦人はつい光に手を伸ばしてしまった。

 そして、弦人の手が光に触れた瞬間、光は爆発したかのように、周囲に広がった。


「なんなんだ、これ!?」


 弦人は光の爆発に包まれ、眩しさで目を閉じた。


 そして、数秒か数分か、どのくらいの時間がたっただろうか。

 弦人は恐る恐る目を開けた。


「え?」


 そこは、明らかに東京ではなかった。


 雄大な自然が視界の果てまで続き、空には巨大な怪鳥が飛び、大地には見たこともない動物の群れが走っていた。


「なんなんだよ、これーっ!?」


 相馬弦人は、異世界の片隅で、力の限りそう叫んだ。

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