異能(脳)

らっと

第1話 誕生日

「おっはよ〜!!」


雲ひとつない快晴。春の朝に気持ちがいいほど明るい声が響く。

着物姿の少女が俺を出迎えた。


「おう・・・相変わらず朝から元気なやつだな・・・・」

「こんな天気のいい日に、よくそんなだらだらできるわね・・・・

それより!!今日がなんの日か忘れたわけじゃないでしょう?」

【上時愛美(かみじあいみ)】喋らなければ相当な美少女だろう。いつもハイテンションですぐに悪態をつく。俺の幼馴染だ。


「おいおい・・・流石に自分の生まれた日は忘れる訳ないだろ。」


「わ・た・しの誕生日!!乙女心のわからない奴め!!

普通こういう時は女の子の誕生日を優先させるものよ!!」


今日は俺と愛美の誕生日なのだ。


「おはよう!!おっ!愛美!!誕生日おめでとう!!」


「おう・・・信、今日は早いな。」

【中間信(なかましん)】見た目は完全にチャラ男。運動神経も抜群で女にもモテる。中身は最高に良いやつ。俺の幼馴染だ。


「さすが信は乙女心しっかりわかってるわね!」

「そりゃ自分の好きな女の子の誕生日は自分にも特別な日だからね!!

あ、大輝もおめでとう!」

「俺はおまけか!!」

【下神大輝(しもがみだいき)】俺はどこにでもいる今日15歳になった、普通の中学3年生。


「乙女心のわからないやつはおまけで十分よ!」

「大輝!俺の愛美泣かせるなよ〜!」

「信・・・・いつからあんたのになったのよ!いい加減にしなさい!!」

「よく見てみろよ・・・・・愛美が泣くわけないだろ?」

「ひっど〜い!私だって普通に泣くわよ!!」


「ほら!3人共朝早いんだから静かにして!お客様のご迷惑になるわよ!!」

知らない人が見ればどこかの女優か何かと見間違うだろう。

老舗旅館の若女将。愛美の母親だ。


『おばさん、おはようございます!』

「大輝くん、信くんおはよう!今日も息ぴったりね!!

奥で早く朝済ましちゃいなさい。」


「今日も着物がお似合いでお美しいです!!」

「信くんは相変わらずね。お世辞言っても何も出ないわよ!」


「ありがとうございます。いただきま〜〜す!」

「あ、大輝くん!夜はみんなでお誕生日パーティするから期待しててね!」

「ありがとうございます!楽しみにしてます!!」


「愛美!ちょっとこっちの片付け手伝ってくれない!」

「は〜い!じゃあ大輝、信!またあとでね!!」



俺の家は地元では昔から続く古い神社なのだが、子供の時に母親が他界し今は親父が一人で俺の面倒を見てくれている。

信の家はお爺さんは「人間国宝」と言われるほどの刀匠で、親父さんも昔は立派な鍛冶屋だったらしいが・・・・今は小さな金物店をしつつ鍛冶仕事もするぐらいらしい。信の母親はそんな親父さんに愛想をつかし出て行ってしまったらしい。

そんな家庭環境もあり、俺と信は旅館をやっている愛美の家で朝飯を食べるという毎日を送っていた。


「ね〜大輝。愛美には告白しないの?」

「おいおい。急に何言ってんだよ!!」


朝飯を食べ出してすぐに信が言い出した。


「え?だって今日で15歳だよ。昔でいえば元服の頃だよ!

十分大人になったしそろそろでしょ!」

「お前、親父みたいなこと言うなよ。」


俺と信、そして愛美は小さな時からずっと一緒に育ってきたのだが、信は愛美の事が昔から好きなのだ。そして俺も愛美のことは好きだ。

信はああ言う性格だからいつも冗談っぽく愛美に好きと言っているが、俺は一度も言ったことはないし、言う気もなかった。今の3人の関係が一番だと思っているからだ。


「そんな今は昔と違うし焦って言うもんでもないだろ。

お前みたいに言えれば楽なんだろうけどさ。」

「え〜言っちゃいなよ!俺思うけど、愛美も絶対大輝のこと好きだと思うけどな〜悔しいけど!」


そんなことを話していると奥から愛美がやってきた。


「まだ食べてるの?遅い!遅い!遅刻するよ!!」

「了解!すぐ行くよ〜!なんか愛美今日はいつもより元気だね!」

「信がくだらない事言うからだぞ!」


愛美に急かされて俺と信は朝飯もそこそこにバタバタと愛美の家を出ようと入り口まで急いだ。

その時・・・・視線を感じた。


「え?」

「大輝?どうした?何かあった?」

「信・・・今誰かに見られた気がする」

「気のせいだよ・・・愛美のとこのお客さんかなにかじゃないの?」


信と二人で周りを見渡しがた誰も見つけられなかった。


「そうだな。気のせいだな。」

「ひょっとして今日誕生日だからって自意識過剰になってるのかな?」

「おいおい、からかうなよ!早く行くぞ!」

「二人共遅い!早く早く!」

「愛美〜すぐ行くから置いてかないで!!」

「そんなに急かすなよ!」


「気のせいだったのか・・・・」


俺はさっき感じた視線が気になったが愛美と信を追いかけて走った。

そして3人で学校に向かった。いつもの様に・・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る