第2話 三角関係と転落
元々、私たち三人は貴族間の階級こそ違うものの、仲の良い幼馴染だった。いつでも三人で遊び、この学園へも共に入学した。私とカイルの婚約は、また父と母が生きていた頃に結ばれたものだ。
そう、もう10年ほど前に。当時はまだ幼く、婚約の意味など知らなかった私たちも、大きくなるにつれて立場が変化していった。リーリエが私と同じようにカイルを好きなことは知っていた。でも貴族である以上、親の決めたことには逆らえない。そのことへの引け目から、私とリーリエの間には溝が生まれていた。
そして関係がおかしくなったのは、私の父と母が領地から戻る途中、野党に襲われ亡くなってからだ。爵位は女では継承できない。ましてや幼い私にはどうすることも出来ず、父の弟であった叔父が私を引き取り、そのまま爵位も家も引き継いだ。特に叔父たちからいじめられたわけではない。ただ彼らは、私には関心はなく、放置され続けただけ。そのうち、父の頃からいた使用人たちが一人、また一人と辞めていった。家の中は豪華な装飾や見たこともないような調度品であふれるようになり、知らない使用人たちが増えていった。
それでも、公爵家という高い身分のある、カイルの婚約者であり続ける限り、最低限の食事やドレスは与えてもらうことが出来た。学園に入ることは、とてもお金がかかるため反対されたものの、公爵家に嫁入りしたら返すと念書を書き、やっと入学させてもらえたのだ。だから侍女といった者たちは付けてもらえず、ここでの食費などは子どもの頃から貯めていたお金を崩して生活するしかなかった。お金は無限ではない。両親が死んでから、そのことが身に染みて分かった。
カイルにこのことを話せば、本当ならばどうにしかしてもらえるのだろう。しかし私はそれだけはどうしても嫌だった。これは私の細やかな意地。婚約がなかったことになるまでは、せめて対等な立場でいたかった。
私は……カイルのことが本当に好きだったから……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます