3-19、 いまはもう秋 

「なにが『二学期に』だよ」

 柳之介は、どんよりした顔でつぶやく。

 この話を思いついたのはギラギラ太陽が輝く真夏だった。

 1年7組で一緒だった紀元と臨にすべてを託し、ちゃちゃっと書き進めるつもりだった。紀元は、その古臭い名前が大河ドラマ的世界に迷い込む役にぴったりだし、臨はちょっと綺麗な顔立ちで、幻の姫に向いていた。あんまりごついのが出てきたら紀元に悪い。

 そこまで決まって、もう書けたも同然、と油断しているうちに、あれ?

 書き出したらすぐだから、と、やれ暑いの寒いの気が乗らないの、体調イマイチだのと言っているうちに。

 今はもう十月中旬だ。日本では食欲の秋、読書の秋などと盛り上がっているが。

 欧州ではもう冬が近い、凍った大地からロシアの戦車隊がやってくる、凍土では戦車は進軍に有利なのだ。その前の泥濘期、ウクライナが雨季の間に奴らを撃退しなくては。

 て、戦争小説を書いてんじゃないぞ!


 湖上の館で眠り続ける婚約者の姫を救いに行く若武者。

 その続きを知りたくて作者のM川先生に、柳之介は手紙を書いた。

 その物語は、姫が男だった、という「恐ろしい逆転」の種明かしでM川先生の説明は終わっていた、その続きはどうなっているのか、柳之介はどうしても知りたかった。しかし返信には、

「ごめんなさい、あの話はウソなんです」

 つまり、M川先生がでっちあげた、ただのあらすじだったのだ。

 姫が男だった。さあ、どうする。

 続きは存在しない、だったら自分で書くぞ、と意気込みだけはよかったが。このザマだよ、はああ。

 まさか、目覚めた女装の姫、いや貴公子か。その彼と若武者が結ばれてハッピーエンド、にするわけにはいかん。

 いつも戒めているように、BLだけは避けなければ。男性読者にドン引きされてしまう、と決めつけるのも変かもしれないが。自主企画でも「読みます、ただしBLを除く」というのもあるから、やはりナーバスになる、いや積極的にBLを書く気はないけど。

 いかんいかん、また脱線してしまった。脱線したふりをして字数稼ぎだろ、と、とっくに本心を見透かされている気が、とほほ。

 とにかく、M川先生のおかげで4話も書けたのは間違いない、感謝あるのみだ。この章も19話まで漕ぎつけられた、真夏の停滞期を思えば夢のようだ。


 絶対に10万字書く、と決めた本作も、挫折の連続ではあるが、なんとか7万7千字を超えた、四捨五入したら八割、達成。このへんで第三部は終了として、いよいよ最終章に突入してもいい頃だ、構想は全く浮かばないけどさ。


 既に柳之介は、次章のジャンルをどうするのか、考える余裕もない。

 それでなくてもジャンルが超変、と指摘されているのに、もう恥も外聞もない、統一感ゼロで構わない、文字数を稼ぐためなら何でもする、とにかく第三章はこれにて完、と居直る柳之介であった。


(第三章・完)


【あとがき】

 いつも読んでくださって、ありがとうございます。

 そういうわけで、次回から最終章に突入の予定ですが、いつ開始できるか五里霧中って感じです。

 意地でも完結させますので、気長にお待ちくださると嬉しいです。

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