30《緑髪の女性と願望の宝玉》
ここは、願望の宝玉がある洞窟の最深部。リューセイ達は、ここに戻ってきていた。
あれからイシスは、母親の魔法で転移させてもらい。四人は、宙に浮いた宝玉から光とともに現れる。
そして五人は横一列に並び、その足元付近に宝玉が無造作にポタッと落ちる。
五人の目の前には、傷だらけの
(クッ、まさか不覚にもこの私が……。このままでは、非常にまずいですね)
そう思い考えるもこの場を切り抜ける方法がみつからない。
(うむ。彼女はいったい)
緑髪の女性を見てクライスは、何者なのかと小首をかしげる。
アベルディオとユリエスとイシスは、ケガをしているその女性をみて心配していた。
(この人が。だけどなんのために)
リューセイはその女性がケガをしていたため、光の主の言っていた者だとわかり鋭い眼光でにらむ。
そうその傷は、自分が負わせたものに間違いないと確信したからだ。
緑髪の女性は、自分に向けられたその鋭い殺気を感じとりその視線の先にいる者をみる。
(あの四人は気づいていない。だけどコッチの彼は、)
そう思い下を向いたまま、上目づかいでリューセイをキッとにらんだ。
だがリューセイからは、その緑髪の女性の表情がみえない。しかし、その鋭い殺気だけは感じとっていた。
(なんて殺気だ。今にも体が射抜かれそうだ)
そう思いその女性のほうに歩み寄ろうとする。
四人もまたその殺気に気づいた。
「待て!! 何があったのか知らないが、相手は女性だ」
そう言い放つとリューセイの手をつかみ行く手をさえぎる。
「 放せっ! アベルディオ。あの女は、俺たちをハメタ張本人だ!!」
そう言いその手を払いのけた。
「それはどういうことだ?」
「クライス。この女は、俺たちを殺すつもりだった。宝玉に細工してな!!」
それを聞き四人は、驚きその女性のほうをむく。
「クッ、」
(どうしたら……そうですね。私を攻撃した彼は、厄介ですが。この四人ならだませそうですねぇ)
そう思いニヤリと笑みを浮かべる。
「あのぉ。私があなた方を、なぜ殺害しなければいけないのですか?」
そう問われリューセイは、どう返答したらいいのかと戸惑った。
その様子を見てその女性は、これならばうまくいくと思いさらに話し始める。
「ここへは、村で宝玉のうわさを耳にしどんな物なのかと拝見したく赴きました。ですが、なぜか彼に攻撃され」
泣いているフリをしながらリューセイを指さす。
そう言われリューセイは、ムッとした表情になり言い返そうとする。
「俺は、」
「おい待てっ!」
クライスは、リューセイが反論しようとするのを遮りとめる。
「なんでとめる?」
「いいからコッチに来い!」
リューセイは、そう言われ渋々うなずく。
するとクライスはアベルディオに小声で、
「どうも状況が把握できん。それに、彼女の言っていることを信じたい。だが、リューがウソをつくとも思えんしな」
そしてその後、緑髪の女性を見張るように伝える。
すると無表情のままアベルディオは軽くうなずいた。
それを確認したクライスは、ついて来いとリューセイに合図をする。そして二人は、アベルディオ達から離れた場所に移動した。
(どういう事? まさか、信用されなかったとでもいうの。ですが、まだそうとは限らない)
そう思い悩み思考を巡らせる。
リューセイとクライスは、緑髪の女性が目視できるぐらいの位置までくると話しだした。
「ここまで来れば大丈夫だろう。それで、いったい何があった?」
「実は、」
幻想世界で何があったのかを事細かに説明した。
それを聞きクライスは事情がわかり納得する。
「そんな事が。んーでもなぁ」
「ねぇ、二人とも」
そうこうしているとユリエスが、いつのまにかそばに来ていて二人の話しに割って入った。
「ユリエス。なんでここに」
そうリューセイが問いかけるとユリエスは、ニカッと笑い話し始める。
「アベルディオが、二人だけじゃ不安だからって」
そう言いアベルディオの伝言をつたえた。
「なるほど、確かにな。こんな手の込んだことを、彼女一人で企てたとも思えん」
「他にもいるってことか」
「うん、多分ね。だけど、ここじゃないどこか別の場所に」
そう言いユリエスは、いつになく真剣な顔で二人をみる。
「んー、そうなると。ソイツをあぶり出すために」
「ああ。しばらく泳がせたほうがいいだろうな」
そう言うと口角を上げユリエスとリューセイをみた。
その後三人で話し合ったあとクライスは、リューセイに罵声を浴びせると思いっきり顔をなぐる。
アタフタしながらユリエスは、それをとめようと二人の間に割って入った。
だがこれは、勿論あくまで緑髪の女性をだますための演技だ。
その後クライスは、怒ったような面持ちでアベルディオがいるほうへと歩きだす。
「っう、痛え……」
(ここまで本気でなぐらなくてもいいじゃないかぁ)
涙目になり痛い頬をさすりながら、ユリエスと一緒にクライスのあとを追った。
その光景を目の当たりにしその女性は、伏せたままニヤリと笑った。
(いいですねぇ。これなら。クスッ)
クライスは、アベルディオのそばまでくると小声で耳打ちをする。
「なるほど。了解だ」
その様子を見てイシスは、黙って見ていることにした。
そしてその後アベルディオは、緑髪の女性の了解を得たあと回復の魔法を使い傷の手当てをする。
「これは、なんとおわびしたら。リューセイの勘違いで、あのようなキズを負わせてしまい。友人代表として、謝らせていただきたい」
アベルディオは、深々と頭を下げると同時に緑髪の女性の手をとり口付けをした。
その女性はキスをされ顔を赤らめる。
「あーえっと、そうねぇ。本来なら、本人に謝罪してもらいたいところですが」
チラッとリューセイを見たあと、アベルディオのほうに視線をもどす。
「いいでしょう。あなたに免じて許します。ですが今後、このようなことのないように気をつけてください」
そう言うと軽く会釈をしたあと、そそくさとこの場から去っていった。
それを確認するとリューセイ達は、ふぅ〜っと息をもらし肩の荷をおろす。
「行ったみたいだな」
クライスがそう言うと四人は、コクリと軽くうなずいた。そして五人は、この場を離れようと歩きだす。
すると足元にある宝玉が光を放ち、五人の目の前まで浮かび上がってきた。それと同時に宝玉がアクセサリーへと変化する。
そうそのアクセサリーとは銀色の竜翼でできている、指輪、腕輪、髪飾り、ペンダント、ブローチだ。
そのアクセサリーには宝玉がはめ込まれている。
五人はそのアクセサリーを手に取って眺めた。
「わぁ、きれいな髪飾りですねぇ。あれ? リューセイの腕輪の宝玉は青なのですね。私のは透明なのに」
そう言われリューセイは、三人の宝玉を順にみた。
「ん? って! なんで俺の宝玉だけ青いんだ? みんなのは透明なのに」
不思議に思い首をかしげる。
そう一時的に能力が覚醒したため、リューセイの宝玉だけ青く染まっていたのだ。
ちなみにクライスが指輪で、アベルディオはペンダント。そしてブローチがユリエスである。
「そういやそうだな」
そう答えるとクライスは、小さな指輪を左の小指にはめ魅入っていた。
「そろそろ、ここを出ないか? あとのことは宿屋で話そう」
そうリューセイが提案すると四人はウンとうなずく。
そしてその後、この洞窟をあとにし草原へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます