28《それは膨大ゆえに……(5)》

 謎の声に黒竜は強化魔法を付与され、「グオォォォォー!!!」と鳴きさけんだ。


 その後、すぐ落ち着きをとりもどすと変化に気づく。


(うぐ。なんだこれは!? 体の奥底から力がみなぎってくる!

 誰がこの力を付与したというのだ。だが、まぁ誰でもよいわっ。このワレに味方する者なのだろうからな)


 そう思うと黒竜は、リューセイを鋭い眼光でにらんだ。


 強化されその目は黄色から赤に染まり血走っている。


 黒竜は「ガオォォォォー!!」と、おたけびを上げリューセイを威嚇した。


 リューセイは一瞬ビクッとする。


(大丈夫。た、多分。それにここは俺の夢の世界だしな)


 心の中で自分にそう言い聞かせた。




 その時、謎の声はというと。


『さぁ黒竜よ! 思う存分あばれなさい。この幻想世界に彼を永久に閉じこめるのです』


 そう言いながら謎の声は、『アハハハハッ……』と高笑いをする。


 そして、リューセイと黒竜の戦いをみていた。




 そんな中リューセイは、なんとか落ち着きをとりもどす。


 そして体勢を立て直すと、幻ノ大剣エクニスカイザーを目の前にかざした。


「よし! あとは頭に浮かんだ技名を叫ぶだけだ」


 そう言いリューセイは、黒竜を鋭い眼光でにらんだ。


「ほう。まだそんな気力が残っているとはな。勇気だけは認めてやろう。だがその余裕すらないほどに、おまえを消し去るのみ」


 そう言い黒竜は、魔法を唱え始めると大きな口をあけた。


 それを見てリューセイは、急ぎ技名を思い浮かべようとする。


「……ん?」


 だが、なぜか技名が頭に浮かんでこない。


(いったいどうなっている? なんで技名が思い浮かんでこない!)


 そう思いリューセイは悩み始める。


 しかし黒竜がそれを待つわけもなく。既に紫色の大きな魔法陣が、黒竜の目の前に浮かび上がっていた。


 リューセイはそれに気づいたがそんな余裕すらない。そしてどうこの場を切り抜けようかと、ありったけの思考をフル回転させる。


(クッ、このままじゃ)


 魔法陣が完成すると黒竜は大きく息を吸いこんだ。そしてすかさずリューセイへと目掛け、凍てつくような紫色の息を勢いよく吐きだした。


 リューセイは間に合わないと思い、とっさにエクニスカイザーを目の前にかざす。すると大剣を覆いつくすように光りだした。


 すると、その大剣に黒竜が放った魔法があたる。


 必死にリューセイは、その魔法を大剣で押し返そうとした。だが、その魔法の威力がありすぎて耐えるのがやっとだった。


(これじゃもたない! それに、このままじゃやられる)


 リューセイは、その魔法に耐えていたが力つきる。そして後ろへと弾き飛ばされ、思いっきり地面にたたきつけられた。


「グハッ、」


(な、なんなんだ! あの光の主が言った通りにしたはず。それなのに、なんで技名が浮かばない。だけど、なぜか剣が守ってくれた。どうなっている?

 んー……ん? そういえば黒竜を倒したとして。そもそも、本当にこの世界から解放されるのか?

 それに、そこまでは言っていなかったよな。って事は、もしかしたら黒竜を倒す以外に方法があるんじゃないのか)


 そう思いリューセイは、エクニスカイザーのおかげで先程よりダメージがなく、よろけながらも立ち上がる。


 そしてあざ笑うかのように黒竜は、そんなリューセイを見おろしていたのだった。

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