6《冒険者登録に来たはずが》

 ここは冒険者ギルドの建物の中。


 冒険者ギルドといっても、さすがに小さな村にあるだけあってあちこちツギハギだらけだ。


 もちろん椅子やテーブルもいうまでもないだろう。


 だが意外にもチラホラと冒険者らしい者たちがいて、酒を飲んだり食事しながら話をしている。



 リューセイ達は建物に入り中を見渡した。


「ほう。これが冒険者ギルドか!」


 クライスはそう言い視線をカウンターの方に向ける。


「うわぁ〜。なんかレトロな雰囲気があって。すごくいいよねぇ」


 そう言い満面の笑みで見まわした。


「ユリエス。それってほめているのか、けなしているのか分からないように思えます」


「イシス。そうかなぁ? ほめてるつもりなんだけど。ふぅ〜ん。そう聞こえるのかぁ」


 リューセイ達は、そうこう話をしながらカウンターに行こうとする。


 と同時にギルド内が急にざわつき始め、リューセイ達の目の前に一人の体格のいい男が立ちはだかった。そして、クライスの前に立つと見おろす。


「フッ、珍しい。こんな田舎の村に、若い冒険者とはなぁ」


「そんなに、珍しいのか?」


 クライスはそう言いその男と目線を合わせる。


「ああ。特に、おまえ達のような冒険者はな!」


 そう言い鼻で笑った。それを見たクライスはムッとしその男をにらみ付ける。


「ほう。いっちょまえに、いい面構えをするじゃねぇか」


 そう言われクライスは、その男に飛びかかろうとした。


 ケンカになったらまずいと思いリューセイは、とっさにクライスの腕をつかんだ。


「クライス! 挑発にのるな。こんなところでケンカなんかしたら大変なことになる」


「ああ。そうだな」


 クライスは、うなずきリューセイの手を払いのける。


 するとその男は、リューセイが発した言葉に対し怒りをあらわにした。そして、リューセイの胸ぐらをつかんだ。


「おい、待ちやがれ! すずしい顔しやがって。おまえが一番、気にいらねぇんだよ!」


「ちょっと、離してくれませんか。なんで俺たちにからんでくるんだ?」


 リューセイは、その男の腕をつかむと力をこめ自分から引きはがそうとする。だが、その男の腕力が上でびくともしない。


「ふんっ。なんでかだと。おまえらのようなガキが、こんな美人を連れて歩いてりゃなぁ。ムカつくんだよ!」


 そう言うとその男はリューセイを解放しイシスを指差した。


 イシスは自分のことだと思わず後ろをキョロキョロとみる。


 四人は一瞬その男が言っていることが分からず、誰のことなのかと指差すほうに視線を向けた。


「「「「あー!?」」」」


 するとそれがイシスだと気づき、四人はふきだしそうになる。


「えっ! それって、もしかして私のことなんですか?」


 リューセイ達に『うん』とうなずかれイシスは、自分が女だと思われ嫌な気持ちになる。だが言い返せず、頭を抱えため息をついた。


「おい! おまえら。なんで笑いをこらえてやがる?」


「なんでって。ぷっ。なあイシス」


 そう聞かれ答えるもアベルディオは、笑いをこらえるのが精一杯でイシスに話をふる。


「アベルディオ。笑わないでください。不愉快です!」


 そう言いムッとした。


「イシス、悪い。俺も笑いをこらえるので精一杯だ」


「クライスまで……はぁ、」


 そう言うとイシスは息をもらす。


 そんな中リューセイは、口と腹をおさえ無言のまま心の中で笑っている。


(ま、マジかよ! 笑える。女と間違われるとはな。確かに、話し方もあんな感じだし。んーだけど、イシスどうするつもりだ?)


 片やユリエスは、両手で口をふさぎ今にもふき出しそうになっていた。


(ちょっと、これって……すごくウケるんだけど)


 急にイシスが不機嫌になり四人が笑いをこらえていたため、リューセイ達の目の前にいる男は不思議に思い首をかしげる。


 そしてイシスは、四人を見たあとその男に視線を向けにらみ付けた。

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