第一章 宮野留雄の場合

序章

 築40年以上のボロアパートの二階で独り暮らしをする彼の日課は、まず毎朝5時半に起床して顔を洗った後、二種類の胃薬を服用する事から始まる。


 それから前日にスーパーで買った総菜パンを一つ食べて朝食を簡単に済ませて、今度は二種類の降圧薬を服用した後、眼科でもらった眼圧を下げる目薬を両目に点眼。ストライプ柄のパジャマからジャージ姿にさっと着替え、決まって6時には颯爽とアパートを出て朝の散歩へ出掛ける……という毎日を習慣づけていた。


『男やもめにうじがわき、女やもめに花が咲く』という言葉があるように、とうの昔に妻に逃げられた独り身ゆえに、不精してだらしなくならないよう、生活に規則性とリズムを持たせる為の日課にしていたのだった。

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