第24話 星空の下での誓い
「え?ドライブ・・・・?」
「そ、ドライブ。最近久しく行ってないし、久しぶりに行ってみようよ。 いい気分転換になると思うの」
うーん・・・・ドライブかあ・・・・ まあ確かに、最近はずっと籠りきりだったし、外の空気を吸いに行くのにちょうどいいかもな。
よし、そうと決まれば・・・・
「行ってみるか、ドライブ。せっかくだし」
そう言うと、とわはニッコリと笑って、そう来なくっちゃ、と呟いた。
その後、軽く支度をして、机の上に置いてあるパジェロのカギを取って、部屋を後にし、駐車場にあるパジェロに二人で乗り込んだ。
パジェロの少し古っぽい内装の匂いを嗅ぐと、なんだか家にいる時とはまた違った落ち着きを覚える。
・・・・そういえば、暫く動かしてなかったけど・・・・動くかなあ・・・・
そんなことを思いながら、キーシリンダーにカギを刺して、ゆっくりと捻ると、クククククク・・・・と少しばかりゆっくりとしたクランキングをした後、心臓は鼓動を打ち始めた。
よかったあ・・・・と思わず声を漏らしてしまった。 とりあえず、パジェロは動けそうだった。
助手席にいる彼女にふと目をやると、なんだか凄くウキウキしている様子であった。
「よし、じゃあ行ってみるか!」
「うん! れっつらご・・・・?だよ!!」
こうして、二人きりで久しぶりのナイトドライブへと駆り出した。
特に行く当ても決めていなかったものだから、とりあえず思い付きで、昔よく行っていた夜景がキレイに見える峠道を目指した。
夜の山道は物音ひとつなく、ただただパジェロのエンジン音と、オーディオから流れる音楽、そして僕らの話し声だけが響いていた。
まるで、世界がこの二人だけになってしまったかのように。
「んん~ やっぱ夜のドライブは気持ちいいねえ。 マイペースに走れるし」
「フフっ さっきまで行きたがっていなかったのは誰だったかしら・・・・? なーんてね。 本当、楽しいわ」
その後も会話は弾んでいった。 今練習していて悩んでいる事、最近聴いた歌の事、互いの最近考えている事とか。 静かな空間の中で、程よく響くオーディオのメロディをバッグに、どんどんと会話は続いていった。
そして、気づけばあっという間に山の上へとたどり着いていた。 そこから見下ろせる、この町すべての営みから生まれる光たち。 思わずため息が出てしまうくらいの光景だった。
「いい景色ねえ・・・・確かに。 でもなんだか不思議な感じ。 私がずっと昔に見た景色はこんな明るくなかったからなあ」
「そっか、とわが家族と一緒に過ごしてた頃は今みたく電球なんて普及する前の時代だもんなあ・・・・ 確かにちょっと変わって見えるのかもねえ」
そして、少し間が開いてから、とわがこう呟いた。
「・・・・こうやって、夜中にクルマで山にきて喋ってると、なんだか凛歌と初めて出会った時の帰り道思い出すわね」
「あ~~・・・・そういえば、こんな感じだったっけね。 あの時はお互い色々とボロボロだったよねえ・・・・ あの時もしかしたら、本当にこの世から消えていってたかもしれなかったのに、どういうわけか、もう何か月も生きているんだもんなあ・・・・ それも、今は割と必死に。 不思議なもんだ」
それに、フッと一瞬微笑んでから、とわは答えた。
「何言ってるの。 それは、あなたの中の大切な何かをあなた自身で見つけることができたからじゃない。 ずっと奥に秘めてた、大好きな歌を。 それができたからあなたはここに二つの足で立ってるんじゃない ・・・・私こそ、なんだかよくわからないまま、生き続けてるけども」
「でも、君のおかげで僕は自分を見つけなおすことができたんだよ。 それにこうして、僕の事を色々支えてもらってるし・・・・ 君がいなかったら、僕はこうしてまた夢を追うことだってなかったんだ。 そこは卑下しなくていいんじゃないかな」
とわは少しホッとしたような表情を浮かべた。
「そ・・・・ならいいけど。 でもね、私も正直こうして凛歌に出会えたから、自分がこうして何百年って時の間、生きていたのも何かの意味があったんじゃないかなって思えたんだ。 色んなところをクルマで回って、旅をして、自分の中の嫌なものを吐き出して。 そして、こうして誰かの夢を支えることができてるのは、本当に嬉しいんだ。 あの時、私を連れ出してくれてありがとう、凛歌」
「ハハっ 何を急に改まって。 こちらこそ、いつもサポートありがとな、とわ。 あと一息頑張るからよろしく頼むよ」
「うん、凛歌もしっかり休みながら頑張ってね。 私もしっかり支えられるようにがんばるからさ・・・・ よろしくね」
うん、よろしく・・・・と僕は答えて、互いに握手を交わした。
小さくて、細い指だったけれど、そこには確かな力がこもっていた。 暫く景色を眺めて、僕らは再びパジェロに乗り込み、家路についた。
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